□ R02年09月期 A-02  Code:[HA0403] : トロイダルコアに撒いたコイルに流した電流によるコア内の磁束の計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H3209A02 Counter
無線工学 > 1アマ > R02年09月期 > A-02
A-02 図に示す環状鉄心Mの内部に生ずる磁束φを表す式として、正しいものを下の番号から選べ。ただし、漏れ磁束及び磁気飽和はないものとする。
問題図 H3209A02a
Fig.H3209A02a

 記録に残る限りでは、2020年(令和02年)09月期に初めて磁気回路の問題が出ました。物理学が得意な人はすぐに答えが出せるかも知れませんが、見慣れないので面喰らいます。今後も変形された問題が出るかもしれないので、あまり難しいことは抜きにして理解しておきましょう。

[1]磁気回路について

 トロイダルコアに巻いた導線に、電流を流すことを考えます。電流によって、コアの中に磁力線が生まれますが、この磁力線は(コアの透磁率が十分大きければ)コアの外部に出る(漏れ磁束と言います)ことはなく、全てがコアの断面を通ります。
 このように、閉じた磁力線が通る部分を磁気回路と言います。

[2]磁気回路におけるオームの法則

 詳しい物理は、アンペールの法則を参照する必要がありますが、ここでは天下り的に、以下のパラメータを定義します。
Fig.HA0403_a 磁気回路におけるオームの法則
Fig.HA0403_a
磁気回路におけるオームの法則
起磁力m…いわば、磁界を発生させる原動力となるもので、巻き数N×流れる電流Iで定義されます。
磁気抵抗m…起磁力に対して、磁力線(磁束)を減らす方向に働く物理量です。磁力線が通る長さ(トロイダルコアでは平均磁路長)lに比例し、透磁率μと断面積Sに反比例します。
磁束φ…m/Rmで定義されます。
 これらの関係をまとめたものがFig.HA0403_aです。この中で、φ=Vm/Rmという式が、電圧Vと抵抗Rから電流I=V/Rを求めるオームの法則に似ていることから、この関係を「磁気回路におけるオームの法則」と呼ぶことがあります。
 ここで、「平均磁路長」という用語は聞きなれないかも知れませんが、トロイダルコアの場合は内径と外径があるので、経路長が内側と外側で異なります。断面が長方形のような単純な形状であれば、また、内径と外径で大きな差がなければ、内径と外径の「平均値」=(内径+外径)/2で計算できます。これを平均磁路長と呼びます。
 Fig.HA0403_aの磁束の式は、φの値がコアの透磁率μ、コイルの巻き数N、電流値Iと断面積Sに比例し、平均磁路長lに反比例する、という式です

それでは、解答に移ります。
 この問題を見て、「全く分からない」と投げ出す前に、多少「物理的思考」は必要になりますが、粘って正解を導き出す方法を書いておきます。
 まず、選択肢を見ると、NやIはこれが大きければ発生する磁束φも大きいだろう、という想像は付き、これらがすべて式の分子に来ているのが分かります。一方、μやSやlはどれが分子でどれが分母に来るのか、よく分かりません。
 ここで、「物理的」に考えてみると、μは「磁力線を集める(密度を上げる)能力」を示す値ですし、Sは断面積ですから、広ければ広いほど、多くの磁力線を通せるでしょう。つまり、μやSも式の分子に来るはずです。
 正確に記憶するには、磁気回路におけるオームの法則のFig.HA0403_aのφの式を暗記するしかありませんが、磁性体の中を磁力線が通る、ということはどういうことなのか、を理解していると、選択肢の式のおかしなものが除外できます。
 「NとIとμとSが分子に来る式」ということで、が正解と分かります。

 なお、この問題は今回(R02年9月期)が初出で素直に磁束φを求める問題ですが、今後、φの式を変形して、NやIやSを求める問題も考えられますので、要注意です。