□ R02年09月期 A-03  Code:[HB0104] : 抵抗からなる回路網の合成抵抗・枝の電流・未知の抵抗値等の計算
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H3209A03 Counter
無線工学 > 1アマ > R02年09月期 > A-03
A-03 図に示す抵抗R=50 [Ω]で作られた回路において、端子ab間の合成抵抗の値として、正しいものを下の番号から選べ。
問題図(横長) H3209A03a
Fig.H3209A03a
 25 [Ω]
 50 [Ω]
100 [Ω]
150 [Ω]
200 [Ω]

 近年、パズルのような抵抗回路の合成が出題されようになりました。これまでに出題されたものと違う回路なので、面食らった方も多いと思います。あまり複雑なものは計算時間が掛かりすぎるので、出題されないでしょう。今後も、この問題のように、回路の対称性等に着目して簡単にできるものが出題されると思います。

[1]複雑なものは単純化して解く

 この手の問題は、複数の抵抗を合成して行き、単純化して行くことが解法のキーとなります。「そう簡単に言うけど、どの抵抗とどの抵抗をどういう順番で合成すればいいのか分かりません」ということも分かります。
 この問題には誘導がない分難しいのですが、電気の法則を使ったパズルを解くつもりで、やって行きます。

[2]対称性に着目する…解法1

 まず、この回路をよく眺めると、端子a−b間を軸とする「上下対称」であることが分かります。
 そこで、Fig.HB0104_rの左上のように上側の枝のノードxn(n=1,2,3)と下側の枝のノードyn(n=1,2,3)yの性質について考えます。図のように、端子a−b間に適当な直流電圧を掛けて電流を流したとすると、xnとyn間の電位差はどうなるでしょうか?
 電源のマイナス側を基準として、ノードxnとノードynの電位をそれぞれExn、Eyn(n=1,2,3)とすると、Exn−Eyn=0、つまり、ノードxnとノードynは同電位(詳細に書けば、Ex1=Ey1、Ex2=Ey2、Ex3=Ey3)です。何故かといえば、上に述べたように、この回路は上下対称で、ノードxnとノードynは対称の位置にあるからです。
Fig.HB0104_r ラダー状回路網の合成 解法1
Fig.HB0104_r
ラダー状回路網の合成 解法1
 ここで、「上下対称」という意味は、上側と下側で、抵抗の比が全て等しい、ということです。分かりやすく書けば、
 x1:Ry1 = Rx2:Ry2 = Rx3:Ry3 = Rx4:Ry4 …(1)
ということです。さらにこれは、
 x1:Rx2:Rx3:Rx4 = Ry1:Ry2:Ry3:Ry4 …(2)
と言い換えることもできます。これが成立っていないと、Ex1=Ey1、Ex2=Ey2、Ex3=Ey3とは言えませんので、下記のような手法は採れません。
 同電位なら、これらをオープンにしてしまってもショートしてしまっても、全体の合成抵抗は変化しないはずです。別の言い方をすれば、Rz1、Rz2、Rz3はそれぞれ「何でもいい」ということです。まず、第1の解法では、開放してしまいます。
 そうすると、回路は一気に簡単になり、Fig.HB0104_rの右下のように変形することができます。
 つまり、この回路の合成抵抗は、片側の全ての抵抗値の和を取ったものの並列と等しくなります。

[3]対称性に着目する…解法2

 上で、「ノードxnとノードynは同電位」なので「これらをオープンにしてしまってもショートしてしまっても、全体の合成抵抗は変化しない」と書きました。ならば、ここではショート(Rzn=0)して考えます。
 Fig.HB0104_rで、x1とy1、x2とy2、x3とy3をそれぞれショートしたと考えると、全体の合成抵抗は、Rx1とRy1の並列抵抗、Rx2とRy2の並列抵抗、Rx3とRy3の並列抵抗、Rx4とRy4の並列抵抗の4つの合成抵抗が直列になったもの、と考えることができます(Fig.HB0104_s)。
 重ねての注意になりますが、上下の枝の4本の抵抗が、(1)式又は(2)式を満たしていることが、この変形の条件です。
 解法1に比べると(普通は)並列抵抗の計算は逆数を取ったりして面倒(=間違いやすい)なので、解法1で解く方が早いことの方が多いでしょう。
Fig.HB0104_s ラダー状抵抗網の合成 解法2
Fig.HA0403_s
ラダー状抵抗網の合成 解法2

それでは、解答に移ります。
 この問題に出てくる抵抗値は、全て同じR=50 [Ω]です。従って(1)式が成立っているのは自明ですし、それによってRz1、Rz2、Rz3は取り払ってしまっても良いわけです。
 「解法1」を使えば、上側も下側も50 [Ω]×4=200 [Ω]となります。従って、ab間の合成抵抗はこれらの並列で、100 [Ω]と暗算でも計算できて、が正解と分かります。(解法2を使っても、50 [Ω]の2並列が4直列、で、100 [Ω]と、同じ答えになります。)

 この問題が出された2020年(R02年)9月期迄には、このような多段のラダー(はしご)状の抵抗回路網は出題されていないと記憶していますが、今回のように全ての抵抗が同じ値の簡単な問題から、上下間の抵抗(Rz1、Rz2、Rz3)が違ったり、上下で抵抗値が違ったりする応用問題も出題される可能性があるので、要注意です。これまでも、抵抗回路網はパズル的な問題が出されてきましたが、この問題のように回路の対称性に着目して「同電位のノード間は短絡しても開放しても、合成抵抗に影響はない」と理解しておけば、比較的簡単に解ける問題が殆どです。