□ R02年09月期 A-06  Code:[HB0702] : セラミックの圧電効果を利用したフィルタ・振動子の構造と動作原理、用途
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09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H3209A06 Counter
無線工学 > 1アマ > R02年09月期 > A-06
A-06 次の記述は、セラミック発振子について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。
(1) セラミック発振子は、圧電セラミックの圧電効果を利用したものであり、その電気的等価回路は水晶振動子と[A]。
(2) 発振させるためには、一般にコルピッツ発振回路の[B]と置き換える方法が採用されている。
(3) 温度変化による周波数安定性は水晶振動子より[C]、安価に大量生産されるようになったことから、電子機器の高周波発振、高周波フィルタ等に利用されている。

同様である コイル 劣るが
同様である コンデンサ 劣るが
同様である コンデンサ 優れ
異なる コンデンサ 劣るが
異なる コイル 優れ

 これまでは、フィルタとしての圧電セラミックの問題が出ていましたが、今回は発振子としての問題です。コルピッツ発振回路の中での実装法を問うなど、かなり高度な問題になっています。

[1]圧電効果を利用したフィルタ素子

 その昔、音叉の共振を利用したフィルタ素子として、マイクロフォークというものがありました。入力で音叉をメカニカルに振動させ、音叉が固有振動数で振動することを利用して、その周波数だけを今度は電気信号として取り出すものです。
 実はここで出題されている素子も原理的には同じです。
HB0702_a 圧電フィルタの構造と動作原理
Fig.HB0702_a
圧電フィルタの構造と動作原理
 この素子は、問題の図にあるように、3つの電極が真中の材料をサンドイッチした形になっています。フィルタ素子なので、入力、出力、コモンの3本の電極があります。
 真中の材料は圧電セラミックで、電界を掛けると機械的歪を生じる(圧電効果)材料です。入力の電極とコモンの間に、様々な周波数成分を含んだ信号を掛けると、その信号に応じてセラミックが振動します(Fig.HB0702_a)。
 出力側の電極は、逆の圧電効果、すなわちセラミックの振動が電荷を生じることを利用して、信号を取り出す働きをします。
 ただ単に、入力に入れた信号が出力側からそのまま出てくるのでは、フィルタとして何の役にも立ちませんので、ここにフィルタとして働くような、工夫があります。

[2]フィルタそして機能する「共振」

 その工夫とは、このセラミックを機械的に「共振」させる、ということです。ここでいう「共振」とは、回路の場合と違い、メカニカルな振動の共振です。つまり、入力電極からドライブされた、いろいろな周波数の振動のうち、セラミックが持っている固有な共振周波数と合うものだけが生き残り、これが出力側の電極に圧電効果で出力される、というわけです。この共振の動作モデルは、Fig.HB0702_aのように直列共振で表されるので、フィルタとしては一般に特性は帯域通過(バンドパス)フィルタとなります。
 メカニカルな振動を利用するため、搭載機器自体が振動していると出力にノイズとなって現れるなどのデメリットはありますが、セラミックの形状や性質を制御することで、Q(通過帯域)や中心周波数を変えられるため、10.7MHzや455kHzといった、受信系(特にラジオ)の中間周波数のフィルタはほとんどこれが用いられています。

[3]発振回路への適用方法

 圧電効果を利用したセラミック振動子は、フィルタ以外にも発振子として用いられます。特に、水晶振動子を置き換える用途が急増しています。その動作を理解するため、等価回路と発振回路への応用例を見ておきます。
 まず、等価回路はFig.HB0702_b左のようになっています。お気づきの方もおられるかもしれませんが、この等価回路は水晶振動子と全く同じです。等価回路が同じでも、同じ電気的特性を持っている(=同様に使える)とは限りませんが、誤解を恐れず大雑把に言ってしまうと、水晶も同じ圧電性を持つ無機物なので、等価回路上での性質はさほど変わりません。
 CSは電極間の容量を意味します。セラミックの物質定数としての容量は、Cの方です。LCでの共振周波数をf0 [Hz]、CとCSが直列になったコンデンサを一つと見なした共振周波数をfSとすると、
HB0702_b セラミック振動子の等価回路と使用法
Fig.HB0702_b
セラミック振動子の等価回路と使用法
 
という式で表されます。よく見ると、(2)式の中に(1)式が含まれていますから、これを代入して、f0とfSには、
 
という関係があることが分かります。つまり、0よりもfSの方が高い、ということが必ず成立ちます(C>0なので)。
 この2つの周波数f0とfSはともに共振周波数ですが、f0は等価回路のLCRからなる直列共振の共振周波数を、fSは並列共振(反共振とも呼びます)の共振周波数を示しています。詳しいことは、専門文献に譲りますが、この0とfSの間で、この等価回路で示される回路は誘導性(周波数が上がるとともにインピーダンスも上がる)を示します(他の領域では、容量性)。発振回路としては、この周波数域を使用します。
 セラミック振動子は、トランジスタ回路でいうと、Fig.HB0702_b右のようなコルピッツ発振回路で用いられることが多く、その位置はこの図のXのようにB-C間に接続します。これも、水晶振動子と全く同じです。
 図のコルピッツ発振回路のXには、誘導リアクタンスが来ます。バルクハウゼンの発振条件式、というものがありますが、難しく考えなくても分かります。この回路図をC1、C2、Xという風に各素子を直列に一回りする閉回路を考えて下さい。閉回路では、誘導リアクタンスと容量リアクタンスが等しくなっていなければなりません。「一回りして元の位置に戻ってきたのだから、リアクタンスの総和はゼロ」でなければなりません。X以外は全てC(リアクタンスは負)なので、足してゼロになるには、Xは正(誘導性)でなければならない、というわけです。
 また、水晶振動子の置き換えが進んでいるのは、安価なためです。温度や振幅に対する周波数安定度が水晶よりも多少低いですが、通信以外の用途では、周波数に必ずしも高精度を求めない用途もあり、そのような用途では、コスト優先で採用されます。

[4]物理的な振動を利用しているが故の注意事項

 水晶振動子でもそうですが、セラミックの物理的な振動を電気信号に変換するため、インピーダンスマッチングが正しく取れていないと、本来の振動モードでないモードでの振動(周波数が本来と異なる)が起きることがあります。
 また、外部の機械的振動を拾って、本来の発振周波数からずれた所にスプリアスを生じる可能性があるので、実装には注意が必要です。

それでは、解答に移ります。
 …セラミック発振子の等価回路は、水晶振動子と同様です
 …コルピッツ発振回路に適用する場合は、コイルとして用います
 …周波数安定性は水晶振動子より劣るが、コスト優位です
となりますから、正解はと分かります。