□ R02年09月期 A-07  Code:[HC0406] : 接合形FETのバイアスの掛け方と相互コンダクタンス
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12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H3209A07 Counter
無線工学 > 1アマ > R02年09月期 > A-07
A-07 次の記述は、図に示すNチャネル接合形の電界効果トランジスタ(FET)について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。
(1) 一般に、ドレイン・ソース間には、[A]の電圧を加えて用いる。
(2) FETの相互コンダクタンスgmは、電圧及び電流の変化分をΔとすれば、gm=[B]で表される。
(3) (1)の場合、VGS=0 [V]のとき、IDは[C]。
問題図 H3209A07a
Fig.H3209A07a


Dに負(-)、Sに正(+) ΔID/ΔVDS 流れない
Dに負(-)、Sに正(+) ΔID/ΔVGS 流れる
Dに負(-)、Sに正(+) ΔID/ΔVGS 流れない
Dに正(+)、Sに負(-) ΔID/ΔVGS 流れる
Dに正(+)、Sに負(-) ΔID/ΔVDS 流れない

 おそらく、世の中のFETの生産数で言えば、圧倒的にMOSFETが多く、接合形FETは少数派のはずです。それは、MOSFETの多くがパワーエレクトロニクス回路のスイッチング用途のためで、アナログ信号や高周波関係では、まだまだ接合形FETも使われます。

[1]接合形FETのバイアスの掛け方

 まず、接合形FETはFig.HC0406_b左のような構造になっています。N形のチャネルに、P形のゲートがPN接合しており、チャネルとゲート間には逆バイアスがかかるようにして使用します。電流はチャネルを流れます。
HC0406_a 接合形FETのバイアス掛け方
Fig.HC0406_a
接合形FETのバイアスの掛け方理
 逆バイアスがかかっていますから、ゲートに電流は流れません(正確には漏れ電流程度の微小電流が流れます)。
 また、接合部(MOS形では酸化物層の下)に空乏層ができていて、これが電流を制限します。逆バイアスをどんどん大きくして行くと、しまいには上下の空乏層がくっついてしまいます。この状態を「ピンチオフ」といいます。ゲート電圧が零の時は、空乏層はできませんから、原理上はチャネルの制限(後に述べるIDSS)まで電流を流すことができます。
 このようにして、接合形FETでは、逆バイアスを掛けておき、その電圧の大きさで空乏層の厚さを変えて、チャネルを流れる電流を制御する仕組みになっているわけです。
 一方、Nチャネル形ではドレインに+、ソースにはドレインよりも低い電圧になるようにして、ドレイン→ソースの方向に電流が流れるように使います。バイポーラトランジスタとは違い、方向が逆になっても電流は流せます。
 ただ、増幅回路としてよく用いられるソース接地回路では、Fig.0406_a右のように、電流がドレイン→ソースの方向に流れるようにバイアスを掛けて用います。

[2]コンダクタンスとは

 「コンダクタンス」はインピーダンス [Ω]やインダクタンス [Ω]に比べて、あまり出てこない用語ですが、単位は[S](シーメンス)で、要するに1/Ωの次元を持つ単位です。
 抵抗は大きければ大きいほど電流を通しにくいですが、コンダクタンスは大きいほど電流が通りやすい、ということを表します。10 [Ω]=0.1 [S]で、0.05 [Ω]=20 [S]といった具合です。
 ところで、なぜ、FETの特性を表すのに、抵抗の逆数なのでしょうか? それは、FETの動作原理である、「電圧で電流を制御する」という機能に由来します。

[3]相互コンダクタンスとは

コンダクタンスのことを考える前に、まず、バイポーラトランジスタ(以下、単にトランジスタと書きます)の場合を考えてみます。トランジスタの「(直流)電流増幅率」はhFEで表されます。この意味は、「コレクタ電流の変化分ΔTCはベース電流の変化分ΔTBの何倍か」、つまりhFE=ΔTC/ΔTBということです。
 ここで思い出していただきたいのは、トランジスタは「ベース電流でコレクタ電流を制御する」素子でした。だから、その制御能力を示すものとして、ベース電流からコレクタ電流への変換係数としてhFEが使われるわけです。hFEが大きければ、少ないベース電流の変化で大きなコレクタ電流を変化させられる、というわけです。
 それでは、FETではその「変換係数」はどんなものを使ったらよいでしょう? FETは、トランジスタと違い、「ゲート電圧の変化分ΔVGでドレイン電流の変化ΔIDを得る素子」です。ここで、トランジスタと同じように考えれば、ドレイン電流の変化分をゲート電圧の変化分で割れば、ゲート電圧からドレイン電流への変換係数、が出せます。
 つまり、ΔID/ΔVGがその変換係数に当たります。これが、FETの「相互コンダクタンスgm」ということになります。確かに、電流を電圧で割った形になっていますから、抵抗の逆数の次元を持つ数です。
 実際の特性は、Fig.HC0406_bのようになります。図では接合形FETのデプレッション形の特性を挙げていますが、MOS形(デプレッション・エンハンスメント)でも本質は変わりません。
 ここで注意しなければならないのは、第一には、この曲線はドレイン−ソース間電圧VDSを一定にして測定しなければならない、ということです。
HC0406_b 相互コンダクタンスとは
Fig.HC0406_b
相互コンダクタンスとは
 DSが異なると、曲線の形も違ってきます。また、第2点は、ゲート電圧によって曲線の傾きが変わるので、たとえVDSが一定でも、gmはVGに対して一定値ではない、ということです。グラフの曲線の傾きは、場所によって違います。まぁこれは、増幅器を設計する際に必要な知識なので、試験には出ませんが。
 相互コンダクタンスが大きい、ということは、小さなゲート電圧の変化で、大きなドレイン電流の変化を得ることができる、ということであり、FETの特性を表す数値になっていることは理解できるかと思います。

 接合形FETの特性が出たついでに、TDSSについて調べておきましょう。接合形の場合、ゲートはチャネルに対して逆バイアスをかけて使用しますから、Nチャネルの場合ゲート電圧(ソースが基準)は0 [V]より大きな電圧は掛けられません。この(VG=0 [V])ときに流れるドレイン電流が最大となります。この電流値をTDSSといい、FETのもう一つの特性値になっています。TDSSは、製造に起因するバラツキが大きく、ちょうどトランジスタのhFEのように、その値でランク分けされていることがあります。実回路の設計では、このバラツキにも注意しなければなりません。

それでは、解答に移ります。
 …[1]で見たように、Dに正(+)、Sに負(-)です
 …G-S間の電圧の変化に対するドレイン電流の変化ですから、ΔID/ΔVGSです
 …接合形FETではFig.HC0406_bのように、ゲート電圧が零でドレイン電流IDSS流れる性質を持ちます
となりますから、正解はと分かります。