□ R02年09月期 A-13  Code:[HE0506] : 直接FM方式を用いたFM送信機のブロック図。AFC回路の動作
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H3209A13 Counter
無線工学 > 1アマ > R02年09月期 > A-13
A-13 次の記述は、可変容量ダイオード(可変静電容量)を使用した原理的な直接FM(F3E)変調回路の例について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。なお、同じ記号の[ ]内には同じ字句が入るものとする。

(1) 可変容量ダイオードは、PN接合ダイオードに[A]電圧をかけたときに生ずる、[B]を誘電体とする一種のコンデンサであり、バイアス電圧の値の変化により[B]の厚さが変化するため静電容量が変化する。
(2) 図において、信号波が加わると可変静電容量Cd [F]が変化することにより、破線で囲まれた共振回路の周波数が信号波の電圧に応じて変化する。共振回路のコイルのインダクタンスをL [H]、コンデンサの静電容量をC [F]とすれば、結合コンデンサCCのリアクタンスが共振周波数に対して十分小さいとき、共振周波数はおおよそ[C]となり、トランジスタTrからFM変調波が出力される。
問題図 H3209A13a
Fig.H3209A13a


逆バイアス 反転層
逆バイアス 空乏層
逆バイアス 空乏層
順バイアス 空乏層
順バイアス 反転層

 これまで、この分野の問題は、FM送信機のブロック図の穴埋めとして出題されていました。そこで解説に用いていた、可変容量ダイオード(バラクタ)を使った直接周波数変調回路の一例が、今回(R02年9月期)そのまま出題されました。基本的には、共振周波数の公式を知っていて、可変容量ダイオードの動作を理解していれば解ける問題になっていますが、解答に若干補足を加えています。
 なお、可変容量ダイオードの解説は、H1912A06等をご参照下さい。

[1]発振周波数をダイレクトに変える直接FM変調の原理

 FMとはそのものずばり、「周波数を変える変調」ですから、例えば、LC発振器で発振している周波数を、L(インダクタ)またはC(キャパシタ)の値を外部から何らかの方法で変化させてやれば、すぐにFM波が得られます。
 Fig.HE0506_aは、そんな考えを具体的な形にした例です。左から信号波(交流)が入ってくると、その振幅が黄色で囲まれた中の可変容量ダイオードDVにかかる逆バイアス電圧を変化させます。すると、この共振回路のCが変化しますから、共振周波数が変化して、出力周波数が信号波によって変化します
 ちなみに、R1とR2は、DVに逆バイアス電圧を与えるための抵抗で、C1は直流阻止の為のACカップリングのため、L1は信号波(低周波)と直流を通し、共振回路の高周波を入力側に漏らさないためのチョークコイル的役割です。
Fig.HE0506_a Cが外部より可変の直接FM変調器
Fig.HE0506_a
Cが外部より可変の直接FM変調器
 また、C2は直流阻止の為のACカップリングのために設けられています。高周波的にはショートなので、DVとC3は並列になっていると考えられます。
 Trはエミッタフォロワになっていて、出力電圧の一部がC4によって帰還されます。Trのバイアス点は、R3とR4(とR5)で定めます。C5は次段へのカップリングコンデンサです。
 割と単純で、すぐこれで送信機に使えそうな感じですが、直接周波数を変化させられるLC発振器というのは、やはり安定性に問題があります。そこで、次に述べるAFC回路で周波数を安定化させてやる必要があります。

[2]直接変調の安定度を補うAFC回路の構成

 AFC回路は、LC発振器の不安定さを補正するフィードバック回路の一種で、Fig.HE0506_bのような構成になっています。
Fig.HE0506_b AFC回路の構成と動作
Fig.HE0506_b
AFC回路の構成と動作
 水晶発振器は(通常は)LC発振器で発振すべき周波数で、安定に発振することができます。その出力とLC発振器からの直接FM変調出力を周波数混合器に入力します。
 周波数混合器では、通常2つの入力の和と差の周波数が出てきますが、ここでは差を取ります。つまり、LC発振器の周波数が、理想的な(水晶が供給する)周波数からのズレの周波数信号として取り出すわけです。
 さらにこれを増幅(ここでの増幅は緩衝増幅的な役割でしょう)して、周波数弁別器に入力します。周波数弁別器は、FM復調の回路でも出題されていますが、入力の周波数に対応した電圧を出力します。
 この電圧を、可変リアクタンス回路に周波数の変動を打ち消す極性にして加えてやれば、LC発振回路の周波数の変動を水晶の周波数に合わせ込むことができます。
 ここでお気づきの方もおられるかと思いますが、この補正は高速で行なうとFM変調でかかった(本来変動してしかるべき)周波数のズレまで補正されてしまい、変調がかからなくなったと同じことになってしまいます。なので、音声周波数よりももっとゆっくりな応答での変動を抑えるようになっているのだと思います(実設計をしたことがないので、自信がありません)。

それでは、解答に移ります。
 設問は、可変容量ダイオードについて理解していれば、ほぼ解ける問題と言えます。(上記の解説のうち、[2]のAFCに関する説明は不要です。)
 …可変容量ダイオードは逆バイアスをかけて用います
 …可変容量ダイオードで誘電体として働くのは空乏層です
 …下記に解説していますが、共振周波数はです
となりますから、正解はと分かります。

 選択肢の根拠ですが、まず、問題文にあるように、信号波によって容量が変化するのはCdです。この可変容量ダイオードにかかる逆バイアス電圧が信号波で変化するからです。
 Cc(Fig.HE0506_aのC2)は解説文に「ここは交流的にはショートと考えて良い」と書きましたが、問題文には「cのリアクタンスが共振周波数に対して十分小さい」とあります。同じ意味ですが、問題文の方がより厳密な表現です。Ccがショートと考えると、問題図の点線の中はLと「CdとCが並列になっているコンデンサがLに直列に繋がったLC共振回路」と考えることができますから、CdとCは足し算で、[C]に入る選択肢はの式になります。
 そもそも、Cd−Cだとしたら、Cd<Cの時は√の中が負になってしまいますから、「周波数が虚数」になってしまいます。インピーダンスが虚数になることはありますが、周波数が虚数になることはありません