□ R02年09月期 A-19  Code:[HH0705] : アンテナの放射パターンの見方と半値角、F/B比等のパラメータの意味
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09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H3209A19 Counter
無線工学 > 1アマ > R02年09月期 > A-19
A-19 次の記述は、図に示すアンテナの指向特性例について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。
(1) 半値角は、主ローブの電界強度が最大放射方向の値の[A]になる二つの方向で挟まれた角度θで表される。
(2) このアンテナの半値角は、[B]とも呼ばれる。
(3) 指向特性の最大放射方向の電界強度をEf、その反対方向の電界強度をEbとするとき、前後比は[C]で表される。

1/√2 ビーム幅 f/Eb
1/√2 放射効率 b/Ef
1/2 放射効率 b/Ef
1/2 ビーム幅 f/Eb
問題図 H3209A19a
Fig.H3209A19a

 アンテナには、その性質を表す様々なパラメータがありますが、この問題は指向性に関するものです。ビームアンテナを製作や購入しようと検討している方にとっては、カタログ値の読み方等でおなじみのパラメータかもしれません。

[1]指向性アンテナの利得とビームパターン

 そもそも論で、アンテナの利得というのは、四方八方に電波を放射しない(受けない)ことで、それを得ています。要するに、縦横方向に電波が放射/受信される範囲を絞り、特定の方向に強く電波を出す(受ける)代わりに、その他の方向には放射しない(受けない)ことによって、利得を得ています
 ですから、当たり前の話ですが、50 [W]出力の送信機に、絶対利得が10 [dB](電力比10)のアンテナを繋いでも、500 [W]の電力がアンテナから出るわけではありません。そのアンテナの最大放射方向で測れば、等方性(アイソトロピック)アンテナに比べて、電界強度が10 [dB]上がりますが、最大放射方向でない方向には、等方性アンテナで放射した時よりも電界強度は下がる、というわけです。
Fig.HH0705_a アンテナの指向性とパラメータ
Fig.HH0705_a
アンテナの指向性とパラメータ
 では、このことを、アンテナのパラメータとして、定量的に表すにはどうしたらよいでしょうか?
 指向性アンテナですから、最大放射方向があります。その方向を角度の原点(0°)として、アンテナを水平面内で回転させながら、電界強度を測定すれば、Fig.HH0705_aのような電界強度の角度パターンが得られます。これを、アンテナのビーム(指向性)パターンと呼んでいます。(通常、放射方向の目盛は電界強度で表します。電力で目盛ったものもありますが、dBで表せば、両者は等価です。)
 まず、最大放射方向に延びているパターンを、メイン(主)ローブと呼びます。最大放射方向の電界強度はEf [V/m]とします。後に述べる前後(F/B)比や前側(F/S)比は、この電界強度を基準にします。
 次に、メインローブとは反対(後ろ)方向に延びているパターンをバックローブと呼びます。主ローブと反対方向の電界強度はEb [V/m]とします。
 さらに、メインローブの方向に対して±90°に延びているパターンをサイド(副)ローブと呼びます。サイドローブは必ずしも±90°の角度に向かないこともあるので、通常は、メインローブやバックローブでないもののうち、最大のものを差すことがあります。最大のサイドローブの電界強度はEs [V/m]とします。
 アンテナを回していると、ローブとローブの間に、ピンク色の矢印のように、電界強度が極小となる角度があります。このような部分をヌル(null)点と呼びます。指向性アンテナを使って方向性探索(アマチュアでやるのはFoxハンティング)を行う際、ローブのピークに比べて、ヌル点は電界強度の変化が鋭い(アンテナの回転角に対して電界強度の変化が大きい)ため、到来方向の特定によく用いられます。
 実際のアンテナでは、このようにきれいなパターンにならない場合もありますが、このデータを元に、次のようなパラメータを定義します。

[2]指向性アンテナの様々なパラメータ

前後(F/B)比
 主ローブの電界強度Efとバックローブの電界強度Ebの比、f/Ebで表されます。真値としては必ず1以上(デシベルで表せば、必ず正の値)であることに注意して下さい。この値が大きければ大きい程、後ろ側に電波を飛ばして(又は後ろ側から来る電波を受信して)しまうことが少なくなる、という指標です。

前側(F/S)比
 主ローブの電界強度Efとサイドローブの電界強度Esの比、f/Esで表されます。これも、F/B比と同様、真値としては必ず1以上(デシベルで表せば、必ず正の値)であることに注意して下さい。この値が大きければ大きい程、前と後ろ以外の方向に電波を飛ばして(又は前と後ろ以外から来る電波を受信して)しまうことが少なくなる、という指標です。

半値角
 主ローブについて、fの方向(0°)から正負の角度側にEθ=Ef/√2となる角度幅θ [°]を半値角、又はビーム幅といいます。なぜ、1/√2なのに「半値」というか、というと、電界強度で1/√2となる、ということは、電力で表せば1/2ということだからです。

[3]ここで触れられていないパラメータ

 実は、アンテナには、これ以外にも指向性に関するパラメータがあります。お気づきの方もおられるかもしれませんが、上に述べたことは、全て水平面内の指向性に関する話であって、垂直方向には何も言っていません。実際、アンテナの指向性は三次元的であって、垂直面内の指向性もあるので、同様の定義で示されます。
 例えば、携帯電話の基地局には、通常は水平面内は無指向性のアンテナが使われます。垂直面内には、多段のコーリニアアンテナ等を用いて、かなり鋭い指向性を持たせます。ビルの屋上に設けたアンテナでは下向きビームにして、地上の端末と通信できるようにしますが、多段にすると、ヌル点も多数できてしまいます。これでは地上で、「あるスポットに来ると通信が切れてしまう」という事態が生じるので、ヌルフィルイン、という、ヌル点をカバーする技術も使われています。

それでは、解答に移ります。
 A…電界強度で言えば、半値角はEf1/√2となる角度幅と定義されます
 B…半値角はビーム幅とも呼びます
 C…前後比の定義は、f/Ebで定義されます
となりますから、が正解と分かります。
 Cで、分母分子を逆にしないよう、ご注意下さい。