□ R02年12月期 A-05  Code:[HB0703] : フィルタの回路トポロジーと減衰特性のグラフの対応、フィルタの名称の関係
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01/11 12月期問題頁掲載
2021年
10/17 09月期問題頁掲載
H3212A05 Counter
無線工学 > 1アマ > R02年12月期 > A-05
A-05 次の記述は、図1に示すフィルタ回路について述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。なお、二つのコンデンサの静電容量[F]は同一とする。
(1) 図1の回路の減衰(通過)特性は[A]であり、遮断周波数fCは通過域に比べて電圧の減衰量が[B]倍となる周波数である。
(2) 図1の回路のインダクタンスの定数をL [H]、各静電容量の定数をC/2 [F]とすれば、遮断周波数fCは[C][Hz]で表される。


図3 √2
図3 2
図2 √2
図2 2
図2 √2
問題図 H3212A05a
Fig.H3212A05a

 いわゆるπ型フィルタの問題です。問題の回路は、入力・出力に並列にコンデンサが入っていますから、ローパス(低域)フィルタだな、ということが直感的に分かります。直感的でなくても、直列にコイルが入っているので、高い周波数程通りにくいだろう、と考えることができます。

[1]フィルタの4パターンとその性質

 まず、Fig.HB0703_aを見て下さい。ここには、基本的な4パターンのフィルタの通過特性を示しました。通過域、というのは、その範囲の周波数成分を通過させることを意味し、また、阻止域、というのは、その範囲の周波数成分を通過させないことを意味します。
 まずは左上の、低域フィルタ(「ローパスフィルタ」以下LPF)です。このフィルタは、ある周波数(以下、カットオフ周波数という意味でfCと書きます)よりも低い周波数を通し、それより高い周波数を通さない(減衰させる)という性質を持ちます。fCは遮断(カットオフ)周波数とも言います。
 この性質を使うと、HF(〜30 [MHz])のリグから出てくる高調波(100 [MHz]<)がテレビ受信に妨害を起こしていることが分かった場合、リグと送信アンテナの間にfC=30 [MHz]程度のLPFを入れてやれば、高調波はアンテナに到達できませんから、妨害を止めることができます。
 2番目は、Fig.HB0703_a右上の高域フィルタ(「ハイパスフィルタ」以下HPF)です。このフィルタは、ある周波数fCよりも高い周波数を通し、それより低い周波数を通さないという性質を持ちます。
 この性質を使うと、HF(〜30 [MHz])のリグから出てくる基本波がFM放送受信(>76 [MHz])に妨害を起こしていることが分かった場合、FMアンテナとFM受信機の間にfC=70 [MHz]程度のHPFを入れてやれば、基本波はFM受信機に到達できませんから、妨害を止めることができます。
Fig.HB0703_a フィルタの4パターン
Fig.HB0703_a
フィルタの4パターン
 3番目は、Fig.HB0703_左下の帯域通過フィルタ(「バンドパスフィルタ」以下BPF)です。このフィルタは、周波数fC1より高く、fC2より低い周波数を通し、それ以外の周波数を通さない(但し、fC1<fC2)という性質を持ちます。
 この性質をSSB受信機の中間周波(IF=455 [kHz])フィルタに使うと、fC1=453.5 [kHz]、fC2=456.5 [kHz]とすることで、目的とする周波数の信号だけを取り出すことができます。
 最後に、Fig.HB0703_右下の帯域除去フィルタ(「バンドエリミネーションフィルタ」以下BEF)です。このフィルタは、周波数fC1より高く、fC2より低い周波数を通さず、それ以外の周波数を通す(但し、fC1<fC2)という性質を持ちます。
 商用周波数(50 [Hz]や60 [Hz])のハム音を除去したい場合、阻止域を55±10 [Hz]としてやれば、どちらの周波数も除去できることになります。

[2]実際のフィルタの構成法 その1 LPF・HPF

 ここでは、オペアンプを使うようなアクティブなものは扱わず、コイルやコンデンサ、抵抗といった受動素子のフィルタの組み方を調べてみます。(実際のフィルタの設計は、遅延や帯域内リプル、減衰傾度など、非常に難しい制約条件の下に行なわれますが、ここではイメージを掴むため、簡単なものにしています。)まずは、簡単なLPFとHPFです。
Fig.HB0703_b LPFやHPFの構成例
Fig.HB0703_b
LPFやHPFの構成例
 LPFは低い周波数を通し、高い周波数を阻止するのですから、Fig.HB0703_b上のように、入力側にLを直列に持ってきて、出力側にCを並列に持ってくれば、目的を達します。具体的にはfCをいくつにするかを決めたら、LCの値を決めるだけです。
 逆に、HPFは高い周波数を通し、低い周波数を阻止するのですから、Fig.HB0703_b下のように、入力側にCを直列に持ってきて、出力側にLを並列に持ってくれば、目的を達します。直流はもちろんCで阻止されます。
 なお、この図も以下の図も同じですが、特に断らなければ左側の端子が入力、右側の端子が出力とします。
 上の構成例は、その回路の形からL型やΓ型と呼ばれ、LやCの構成要素が2個(2次)のフィルタですが、もっと急峻な特性を得たい場合は、Fig.HB0703_cのように構成要素を追加して、3次とします(もちろん、もっとカスケードにこれを追加して行けば次数は増やせますが、設計は難しくなります)。
 回路の形から、これらはそれぞれπ型やT型と呼ばれます。
 π型の場合、X1がコイルで他がコンデンサの場合に低域フィルタ(LPF)に、X1がコンデンサで他がコイルの場合に高域フィルタ(HPF)となります。
Fig.HB0703_c π型とT型
Fig.HB0703_c
π型とT型
 T型の場合は、この逆です。いずれも、部品1つが増えただけで、その動作原理はL型やΓ型と同じです。
 なお、リアクタンス部分を共振回路にしてしまうと、特定の周波数だけを通したり排除したりできますが、これは後で触れます。

[3]実際のフィルタの構成法 その2 BPF・BEF

 ある幅を持った帯域を、通過させたり阻止したりするBPF・BEFは、LPF・HPFを応用して以下のように構成します。
Fig.HB0703_d BPEやBEFの構成例
Fig.HB0703_d
BPEやBEFの構成例
 BPFはfC1より高く、fC2より低い周波数を通過させます。そのためには、Fig.HB0703_d上のように、最初にカットオフがfC1のHPFを持ってきて、次段にカットオフがfC2のLPFを持ってくれば、総合特性は両者の乗算になりますから、fC1からfC2までの成分だけが通過することになります。
 BEFはfC1より高く、fC2より低い周波数を阻止します。これには、Fig.HB0703_d下のように、カットオフがfC1のLPFと、カットオフがfC2のHPFを並列に接続すれば、総合特性は両者のORになりますから、fC1からfC2までの成分だけが阻止されることになります。

[4]共振回路はフィルタになる

 これまでは、LやCの性質(周波数によってリアクタンス、すなわち電流の通しやすさが異なる)を使ってフィルタを構成してきました。同じLとCからなる共振回路も、特定の周波数でインピーダンスが最小になったり最大になったりするので、フィルタとして使えないでしょうか?
 それを考える前に、簡単に共振回路の復習をしておきます。
 ある、LとCからなる共振回路の共振周波数をfr、共振周波数でのインピーダンスをZとすると、Fig.HB0703_eのように、
□ 並列共振回路…
 frZ最大(∞)=通過量最小
□ 直列共振回路…
 frZ最小=通過量最大
となります。つまり、並列共振回路・直列共振回路をそれぞれ信号経路に入れると、並列では周波数成分frが取り除かれ、直列ではfrの成分のみが出てくる、というわけです。
Fig.HB0703_e 並列・直列共振回路と信号透過量
Fig.HB0703_e
並列・直列共振回路と信号透過量
 取り除きたいor通したい周波数が決まっていて、それ以外とは急峻に区別したい、という場合にもってこいのフィルタです。理想的にはfrの信号成分のみに効果があることですが、共振回路のQ(共振の鋭さを表す)は有限なので、fr近辺の成分も多少出てきてしまいます。逆に考えれば、通過帯域にある程度幅を持たせたければ、Qを下げればよいわけです。
 ただ、帯域を広く取ろうとするあまり、Qの極端に低い共振回路を持ってきてしまうと、大きな減衰(直列なら値の大きな抵抗、並列なら値の小さな抵抗)を入れなければなりませんので、フィルタとしてはロスが大きくなり、現実的ではありません。BPFやBEFで帯域を広く取りたいときは、やはり[3]の方法で構成します。

[5]共振回路の組合せでもっと急峻な特性を得る

  Fig.HB0703_fにこの3つの共振回路をT字型に組合せた回路を示します。上が帯域(通過)フィルタ、下が帯域除去(消去)フィルタです。各エレメントは共振回路を示し、緑の箱が直列、黄色の箱が並列の共振回路を示します(箱の中の「曲線」は透過特性を示します)。
 これらについて、3つの共振回路がそれぞれどのように動作するかを考えてみます。各共振回路の共振周波数はすべて同じで、それをfrとします。
 まず、上の帯域フィルタについてみると、信号線に繋がる2つの共振回路は直列共振なので、frの信号以外に対して高インピーダンスで、A側からB側に抜けられませんが、frの成分のみB側に出られます。
 一方、真中は並列共振回路ですから、fr以外の信号は低インピーダンスでコモン(GND)に落ちてしまいますが、frに対しては高インピーダンスです。
Fig.HB0703_f T形フィルタの原理
Fig.HB0703_f
T形フィルタの原理
 結局、この回路の総合特性としては、A側に入力されfrの成分以外はB側には、非常に通りにくいものの、fr成分は通すようになっています。つまり、特定の周波数(=fr)のみを通過させる「帯域通過」フィルタとして動作します。
 同様にして、下側の帯域除去フィルタについて見てみます。信号線に繋がる2つの共振回路は並列なので、frの信号のみ高インピーダンスで、A側からB側に抜けられませんが、fr以外では(減衰はあるものの)B側に出てきます。
 一方、真中は直列共振回路ですから、frの信号は低インピーダンスでコモン(GND)に落ちてしまいますが、それ以外の周波数成分に対しては高インピーダンスです。
 結局、この回路の総合特性としては、A側に入力されたfrの成分はB側には非常に通りにくいものの、他の成分は通すようになっています。つまり、特定の周波数(=fr)を除去する「帯域除去(又は消去)」フィルタとして動作します。

それでは、解答に移ります。
 問題の回路図を見ると、π型のLPFです。図2と図3は通常のフィルタの通過特性のグラフと違って、縦軸が減衰量を示していますから、ちょっと面食らいますが、要するに上の方に行くほど減衰が大きい、ということです。LPFですから、周波数が上がるほど減衰量も上がるグラフを選べば良いわけで、Aは図2です。
 次に、フィルタの特性を表記する際、通過する「電力」が1/2となる周波数を遮断周波数と言います。入出力のインピーダンスが同じなら、電圧比でいうと、出力が入力の1/√2になる電圧となりますから、Bは問題文の「減衰量」で言えば√2ということになります。
 遮断周波数の計算は、難しいので掲載していません(私が理解できないから)が、π型LPFで入出力のインピーダンスが同じ場合、コンデンサがC/2の容量であれば、1/π√(LC)となります。
 従って、正解はと分かります。