□ R02年12月期 A-06  Code:[HC0306] : トランジスタのhパラメータと特性曲線グラフの対応
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05/14 04月期問題頁掲載
01/11 12月期問題頁掲載
2021年
10/17 09月期問題頁掲載
H3212A06 Counter
無線工学 > 1アマ > R02年12月期 > A-06
A-06 次の記述は、エミッタ接地で用いるトランジスタの静特性曲線とhパラメータについて述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。ただし、図はトランジスタの電圧電流特性を示し、またΔはそれぞれの電圧及び電流の微小変化分を示す。
(1) 第1象限の特性曲線の傾きΔIC/ΔVCEは、[A]アドミタンスで、通常hoeで表される。
(2) 第2象限の特性曲線の傾きΔIC/ΔIBは、[B]増幅率で、通常hfeで表される。
(3) 第3象限の特性曲線の傾きΔVBE/ΔIBは、[C]インピーダンスで、通常hieで表される。
(4) 第4象限の特性曲線の傾きΔVBE/ΔVCEは、電圧帰還率で、通常hreで表される。


出力 電流 入力
出力 電圧 伝達
出力 電圧 入力
入力 電圧 伝達
入力 電流 入力
問題図 H3212A06a
Fig.H3212A06a

 今回(R3年12月期)の試験より前は、トランジスタのhパラメータの総合的な出題は、記録に残る限り、ありませんでした。そのため、試験場で困られた方も多かったと思います。大学の電子回路学の本を開けば書いてありますが、数式が多くて、今一つよく分かりません。hパラメータは、ディスクリートトランジスタのデータシートを見れば、グラフから読み取れるものではありますが、その「電子回路的意味」が分からないと理解しにくいものです。
 ここでも、数式が多くなってしまうのですが、なるべく「hパラメータの意味が分かる」ように解説したいと思います。

[1]hパラメータとは何か

 電子回路を四端子回路網として見た時、その入力と出力をFig.HC0305_aのように定義して、h行列(マトリクス)の要素という形で、ブラックボックスの中身を記述してみよう、というのが電子回路でよく用いられる「○○パラメータ」という考え方です。
 高周波でよく使われるSパラメータも、この一種ですが、その他「○○パラメータ」には様々な表記の方法があって、これとは電流や電圧の定義が違っていたりするので、この図の定義が唯一、というわけではありません。
 その差異はともあれ、要するに、回路の中身を、その回路に出入りする電流や電圧(Sパラメータでは電力)を元に記述してやろう、という発想です。
 なお、入出力の電圧の定義は違和感はありませんが、電流については、矢印が「内(回路)向き」になっていることに注意して下さい。
Fig.HC0305_a 四端子回路網のhパラメータ
Fig.HC0305_a
四端子回路網のhパラメータ
 は2行2列の行列で、要素はh11〜h22の4つです。
 
 改めて、Fig.HC0305_aで定義したような入出力の電圧で、関係式を書いてみると、
 
 と書けます。
 さて、ここまでは単に「回路をブラックボックスとして、その性質を調べるために図のように電流と電圧、行列を定義しました」ということだけで、それ以上のことは何もありません。回路の性質を表すのは、この行列で、4つの要素がそれぞれどんな意味を持っているのか、を、ここから考えて行きます。

[2]エミッタ接地増幅回路とhパラメータ

 問題になっているのは、エミッタ接地回路ですから、ブラックボックスの中に(バイポーラ)トランジスタをコモンエミッタの形で入れてみましょう。それがFig.HC0305_bです。バイアス回路やゲイン抵抗はなくていいのか、と思いますが、今回は現実の増幅回路を調べるのではなく、「トランジスタそのものの特性」をhパラメータとして求めたいので、トランジスタだけを考えます。
Fig.HC0305_b エミッタ接地の回路方程式
Fig.HC0305_b
エミッタ接地の回路方程式
 まずは、Fig.HC0305_aとの対応で、入出力の電流や電圧、行列の要素を(c)式及び(d)式のように書き直します。
 
 
 (d)式のhxeが、この後意味を調べて行く、hパラメータ、ということになります。hに付いているie、oe、fe、reに共通の"e"はエミッタ接地を意味します。他の文字については、後で説明します。
 これらを(b)式に代入すれば、エミッタ接地のトランジスタで(b)式に相当する式は、
 
と書けます。さらに、分かりやすくするために、VBEやICについて書けば、
 
となります。ここまでは、数式をあれやこれやと変形してきただけですので、電子回路とは本質的には何も関係ありません。現実にトランジスタが持っている特性との対応を考えるのは、ここからです。

[3]hパラメータが示す等価回路

 まず、(f)式に着目します。この式が言っているのは(言葉で書けば)、ベース電圧VBEはベース電流IBにhieを掛けたものと、エミッタ電圧VCEにhreを掛けたものの和、ということです。式を見て分かるように、右辺の2項は共に電圧の次元を持っていなければなりませんから、ieは抵抗の次元、hreは無次元の数であることが分かります。
 次に、(g)式に着目すると、コレクタ電流ICはベース電流IBにhfeを掛けたものと、エミッタ電圧VCEにhoeを掛けたものの和、と等しいということです。これも、式を見て分かるように、右辺の2項は共に電流の次元を持っていなければなりませんから、feは無次元、hoeは抵抗の逆数(コンダクタンス)の次元であることが分かります。
 一方、Fig.HC0305_cのように、エミッタ接地のトランジスタの等価回路を描いて、各パラメータが(f)式、(g)式のどの項に当たるのか、を考えてみます。
 式(f)からは、ベースに入っている直列抵抗がhieと、起電力hreCEが直列に入ってベース電圧VBEを生み出していることが分かります。
 式(g)からは、出力電流ICがベース電流IBのhfe倍の電流と、コレクタに入っている並列抵抗に流れる電流hoeCEの和であることが分かります。
Fig.HC0305_c エミッタ接地等価回路
Fig.HC0305_c
エミッタ接地等価回路
 上の説明では、あたかも「数式に合わせるように等価回路を描いた」ようになっていますが、実際には「実際の回路の振舞いを元に考えた等価回路が、hパラメータという形でよく表せる」というように理解します。
 Fig.HC0305_cの等価回路は線形ですが、実際にはhパラメータが定数ではなく、各部の電流や電圧に非線形に依存することになります。通常、その非線形性が問題にならない条件で使うので、このモデルをよく用います。

[4]4つのhパラメータの意味

【ベース抵抗(入力インピーダンス)hie
 まず、hieを求めたいと考えます。(実際に可能かどうかは別として)原理的には、出力電圧VCEを短絡してゼロにしてしまえば、数式上は、
 
と求められます。厳密には、VBE/IBは一定値ではありませんので、右辺を微分で表して、
 
と書くことができます。このhieは、等価回路から分かるように、ieはベース抵抗(入力インピーダンス)です。トランジスタのデータシートにも、この値が(様々な他の条件と共に)示されているものがあります。

【電圧帰還率 hre
 次はhreですが、これは、等価回路を見ると、出力の電圧VCEがベースに直列に戻る(帰還する)形になっています。そのため、reは(電圧)帰還率、と呼びます。求め方は、上記と同様(但し今度はIB=0として)で、
 
となります。

【電流増幅率 hfe
 次はhfeです。これは、実設計でも非常によく使うので、ご存知の方も多いと思いますが、ベース電流がhfe倍されてコレクタに流れる、という電流増幅率を示します。これが、トランジスタの電流増幅の本質を示すパラメータであり、最も重要なものと言えるでしょう。
 これも、(実際に可能かどうかは別として)原理的には、出力電圧VCEを短絡してゼロにしてしまうと考え、
 
と求められます。このhfeは、個体バラツキが大きく、トランジスタによっては値によってグレード分けされているものがあります。

【出力アドミタンス hoe
 最後にhoeですが、これは出力端子間に並列に入っている抵抗です。並列に入っているので、oeは出力アドミタンスで下記のように表します。
 
トランジスタの出力は電流出力ですから、この部分を流れる電流はゼロに近いほど理想的で、言い換えれば、oeはゼロに近いほど、理想的な動作をするトランジスタ、ということになります。

それでは、解答に移ります。
 まず、こんなの見たことない、というグラフが示されています。このグラフの意味が分からず、解くのを諦めた方も多かったのでは、と想像します。問題文と合せてよくよく見れば、一つ一つの象限(のグラフの微分係数)が1つのhパラメータを示しているのだ、ということが分かりますが、持っている参考書などをひっくり返しても、このような書き方のグラフにはお目にかかれませんでした。
 グラフの特異さはさておき、一つ一つの象限に着目すれば、hパラメータとどう結び付けたいのか、出題者の意図が見えてきます。

 …第1象限のΔIC/ΔVCEは(l)式で出力アドミタンスhoeを示します
 …第2象限のΔIC/ΔIBは(k)式で電流増幅率hoeを示します
 …第3象限のΔVBE/ΔIBは(i)式で入力インピーダンスhieを示します

 従って、正解はと分かります。