□ R02年12月期 A-25  Code:[HJ0604] : オシロスコープにリサジュー図形を描いて正弦波交流のパラメータを測定する方法
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H3212A25 Counter
無線工学 > 1アマ > R02年12月期 > A-25
A-25 次の図は、リサジュー図とその図形に対応する位相差の組合せを示したものである。このうち誤っているものを下の番号から選べ。ただし、リサジュー図は、オシロスコープの垂直(y)入力および水平(x)入力に周波数と大きさが等しく位相差がθ [rad]の正弦波交流電圧を加えたときに観測されたものとする。
問題図(横長) H3212A25a
Fig.H3212A25a

 今回(R2年12月期)は新しい問題が次々と出ていますが、リサジュー図って何だ、と面食らった方も多かったのではないでしょうか? 高周波屋さんでもなかなかこの図形には仕事でお目にかかることはないのではないかと思います。純粋な数学の図形なのですが、電気信号に応用すれば、2信号の振幅や周波数、位相が分かる、というものです。途中まで数式で扱いますが、難しい(数式では説明しきれなかった)ので、途中からExcelでシミュレーションしています。

[1]リサジュー図形とは

 科学館等で、天井から吊るしたx−y両方向に振動する長い振り子の下にバケツを付け、白い砂を入れて黒いテーブルの上に砂を落としながら振り子の軌跡となる図形を書かせる、という展示があります。そうして描ける図形がリサジュー図形です。
 早い話が、x方向とy方向に振動する運動を合成して描ける図形、ということになります。
Fig.HJ0604_a リサジュー図形の描画方法
Fig.H0604_a
リサジュー図形の描画方法
 電子回路の測定の世界でこれを実現するには、Fig.HJ0604_aのように、オシロスコープの2つのchをそれぞれ、x軸に電圧入力、y軸も電圧入力のモードに設定(通常はx軸は時間軸)し、2信号をそれぞれ入力します。直流成分を持たない正弦波交流を見る場合は、管面(波形の表示されるエリア)の中心をx軸もy軸も原点に設定します。
 ある瞬間、x入力の電圧とy入力の電圧が示す位置に輝点が表示され、これが時間とともに動いて行くので、図形が描ける、というわけです。

[2]正弦波の位相や周波数が異なるとリサジュー図形はどうなるか

 正弦波交流で考えた場合、2つの信号間には、振幅、周波数、位相の3つの要素が異なることが考えられます。 2つの正弦波を
 
と表記して、周波数や位相が異なる場合を考えて行きます。振幅については、単純に上下左右の振れ幅が変わってくるだけなので、省略(以下の説明では、両信号とも振幅は同じと)しています。

(1) 位相差だけが異なる場合
 周波数と位相をいっぺんに扱ってしまうと、考えにくいので、まずは位相だけが異なるとして考えます。
 位相差がない時、つまり、(2)式でθ=0の時は、
 
となります。原点を通る傾き1の一次関数です。但し、|x|≦Aかつ、|y|≦Aですから、これを超える範囲には広がりません。
 次に、180°の位相差、つまり、(2)式でθ=πの時は、
 
と表せます。原点を通る傾き-1の一次関数です。これも、定義域と値域が|x|≦Aかつ、|y|≦Aとなります。
 さらに、90°の位相差、つまり、(2)式でθ=π/2の時は、
 
となります。これは、原点を中心とする半径Aの円の式です。なお、(2)式でθ=3π/2の時も、結果の方程式は円になります。数学の得意な方は計算してみて下さい。
 さらに細かく見て行くため、(2)式でθ=π/4と置いたらどうなるか、を考えると、
 
となります。(7)式を変形すれば、短軸、長軸共に+π/4(45°)傾いた楕円の方程式が導けるはずですが、いろいろあがいてみたものの、結局分かりやすい説明にはなりそうもない(数学力がない++45°回転の行列を持ち出して、ぐりぐり計算する)ので、やめにして、ここから先は数値シミュレーション(とは言ってもExcelの計算とグラフ)で見てみることにします。Excelでx、yを(1),(2)式で計算し、それを「散布図」というグラフで表示させたものです。
 Fig.HJ0604_bではまず、位相差を0〜3π/4まで、π/4ステップで変えています。
> Fig.HJ0604_b 周波数が同じで位相差がある場合1
Fig.HJ0604_b
周波数が同じで位相差がある場合1

次のFig.HJ0604_cでは、位相差をπ〜7π/4まで、π/4ステップで変えています。
> Fig.HJ0604_c 周波数が同じで位相差がある場合2
Fig.HJ0604_c
周波数が同じで位相差がある場合2

 これを見て分かるように、傾き+1の直線→長軸が45°傾いた楕円→円→長軸が-45°傾いた楕円→傾き-1の直線…と、これ以降はこの逆順の繰返しとなります。ですから、θ=π/2とθ=3π/2、θ=π/4とθ=5π/4、θ=π/4とθ=7π/4はそれぞれ区別が付きません
 このように、周波数が同じなら、位相差に応じて直線が開いて円になったり、閉じて直線に戻ったり(但し、傾きが逆)するわけです。これを利用して、2つの信号間の位相差を感覚的に掴むことができます。例えば、あるデバイスの入出力をx軸とy軸に入れてやれば、一定の位相関係からずれれば形が変化するので、異常を検知できる、というような使い方です。

(2) 周波数と位相差が異なる場合
 いっぺんに変えてしまうと分かりづらくなるので、周波数比は一定にして位相を変えてみたのがFig.HJ0604_dのA〜Cです。このケースでは、x:yで周波数の比を1:2としています。位相差が0,πの時は「サインカーブの片割れ」のような曲線(A,C)になりますしπ/2の時は蝶のような形(B)になります。
Fig.HJ0604_d 周波数と位相差が異なる場合
Fig.HJ0604_d
周波数と位相差が異なる場合

 さらに、位相差はπ/2として周波数比は1:3としたのがDです。Bと比べてみると、上下方向に出ている「突起」の数が2個→3個に増えています。周波数の比を3:1にしてみると、この図形が90°回転した形になります。
 周波数比が簡単な整数比になる場合は、対称軸のある形になりますが、無理数や単純な比にならない数だと、非対称になったりします。

[3]おまけ

 リサジュー図形といえば(個人的には)思い出すのが、わが出身大学の校章です。この図形のことは、大学に入って知りました。銀杏やらペンやらツバメではなく、リサジュー図形ですからね、知った時は「マニアックこの上ないな」と思いました。
 Fig.HJ0604_eがあしらわれているリサジュー図形ですが、これは、位相差=0、xとyの周波数比が5:6になっています。
 その昔、大学生協の上の階に「リサ」という名前の喫茶室がありましたが、この名前が校章から取られた、という話を聞いたことがあります。ですが、今はもうこの喫茶室はないようです。もう30年も前の話ですからね。
 ここから先は、この記事を書くために大学のHPに検索を掛けて知ったことですが、周波数比の5:6というのは、東の50Hzと西の60Hzの比、とのことで、地名を冠さない国立大学として広く国内に開かれた大学、の意味があるんだそうです(在学中は知りませんでした)。
Fig.HJ0604_e 電気通信大学の校章のベース
Fig.H0604_e
電気通信大学の校章のベース
 ここで鍛えられた電磁気学の講義とその後の研究で、今も何とかご飯が食べられているわけで、この図形には敬意を表さなければなりません。

それでは、解答に移ります。
 問題の1〜5の図形を、Fig.HJ0604_b,Fig.HJ0604_cのものと比較して、θ=3π/2のものが合いませんから、正解はと分かります。