□ R04年04月期 A-21  Code:[HH0307] : U形バランの構造と動作原理、特性
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2022年
12/31 12月期問題頁掲載
09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H3404A21 Counter
無線工学 > 1アマ > R04年04月期 > A-21
A-21 次の記述は、U形バランについて述べたものである。[ ]内に入れるべき字句の正しい組合せを下の番号から選べ。なお、同じ記号の[ ]内には、同じ字句が入るものとする。
(1) 図に示す、同軸ケーブルをU字形に曲げたうかい線路の長さを、同軸ケーブル上の波長の[A]波長にすると、うかいした点bにおける電圧、電流の位相は点aより[B][rad]遅れるため、不平衡−平衡変換がなされる。
(2) ab間のインピーダンスは同軸ケーブルの特性インピーダンスの[C]倍となる。


1/2 π/2 4
1/2 π 4
1/2 π/2 2
1 π 2
1 π/2 2
問題図 H3404A21a
Fig.H3404A21a

 今回(2022年4月期)、Uバランは初出です。最近、アンテナ関係の問題は、このようなバラン等の「脇役」も出題されるようになっている気がします。Uバランは作りやすいので、アンテナを自作される方はなじみ深いかもしれません。
 手持ちの参考書類では、Uバランについて伝送線路理論として書かれたものがなく、自分自身も完全に理解していないので、何となく現象論的な説明になってしまっていますが、ご容赦下さい。

[1]ケーブル上の波長は自由空間より短い

 まず、最初に「念のため」の注意です。同軸ケーブルや平衡フィーダ等の「伝送線路」に交流を通す時、その伝搬速度は自由空間の電磁波(平面波)の速度(=光速c)より遅くなります。
 例えば自由空間で波長1 [m](=300 [MHz])の電磁波であっても、同軸ケーブルの中を進む時は、70 [%]前後のスピードに落ちるので、ケーブルの中での波長は70 [cm]前後、ということになります。この、「何%までスピードが落ちるか」つまり「波長が自由空間の何%になるか」を波長短縮率といいます。
 以下、この問題で「波長λ」と言う時は、ケーブルの中を進む電磁波の波長を言うこととします。
 なお、具体的に何%まで遅く(短く)なるか、は、ケーブルの絶縁材の比誘電率やケーブルの構造に依存しますので、それらが定義されないと、求められません。

[2]半波長のケーブルに交流を通すと…

 Uバランの話に入る前に、半波長の無損失ケーブル(特性インピーダンスZ0 [Ω])について、入出力の電圧を調べてみることにします。
Fig.HH0307_a 半波長ケーブル上の電圧
Fig.HH0307_a
半波長ケーブル上の電圧
 Fig.HH0307_aのように、入力に周波数f [Hz](周期T=1/f [s])の正弦波交流電源、出力側には(この系が整合するように)抵抗値がZ0の抵抗を接続します。
 交流電源の周波数を調整して、ケーブルがちょうど1/2波長になるようにした時、ケーブル入出力はどうなるでしょうか。
 これを考えるには、ケーブル上の電圧の電圧分布を考えるのが簡単です。時間の原点t=0 [s]において、Fig.HH0307_aの上のような電圧分布だったとします。
 このT/2 [s]後、このケーブル上の電圧分布はFig.HH0307_aの中ほどの波形になっているでしょう。ここで、入口:x=0 [m]の点と、出口:x=λ/2の点の電圧を比べてみると、常に反転していることが分かります。つまり、このケーブルの入口と出口では、波がこの中を進む間に位相が180°(π [rad])遅れて極性が反対の電圧が出てくるというわけです。

[3]Uバランの動作

 ならば、この便利なλ/2長のケーブルを使って、位相を反転させれば、不平衡−平衡変換を実現できるのではないか、と考えた人がUバランを作ったのでしょう。
 なお、平衡、不平衡とは何か、といった点は、H1208A21等で解説していますので、そちらをご参照下さい。
 Fig.HH0307_bのように、同軸ケーブル(特性インピーダンスZ0 [Ω])の不平衡入力からの信号(電流I [A]、電圧V [V])を、一方は端子aに、他方はU字に曲げたλ/2の迂回線路(入力と同じ同軸ケーブル)を通して端子bに至るように接続します。各同軸の外側導体は、全部短絡しておきます。
 このようにすれば、出力には、互いに逆位相の電圧、電流の平衡出力が得られます。分岐点では、電流は等分に分流(I/2 [A])し、電圧振幅は入力の2倍、2V [V]が出力されます。
Fig.HH0307_b U形バランの動作
Fig.HH0307_b
U形バランの動作
 入力側では、電圧電流比がケーブルの特性インピーダンスに等しいので、
 Z0=V/I [Ω] …(1)
となります。一方、出力側は、上で述べたように電流がI/2 [A]、電圧が2V [V]になっていますから、そのインピーダンスZb [Ω]は、
 Zb=2V/(I/2)=4V/I=4Z0 [Ω]
となって、出力側のインピーダンスは元の4倍になっていることが分かります。

それでは、解答に移ります。
aとbで位相を反転させるためには、迂回線路の長さは1/2波長である必要があります
迂回線路を通る間に、信号はπ[rad]遅れます
ab間のインピーダンスは、この間の電圧が2倍、電流は半分となりますので、同軸の4倍となります

となります。従って、正解はと分かります。