□ R04年08月期 A-01  Code:[HA0309] : コンデンサに蓄えられるエネルギーの公式と計算
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09/01 08月期問題頁掲載
05/14 04月期問題頁掲載
H3408A01 Counter
無線工学 > 1アマ > R04年08月期 > A-01
A-01 図に示す回路において、C1の両端の電圧V1が4 [V]であるときの、二つの静電容量C1及びC2に蓄えられる静電エネルギーの総和の値として、最も近いものを下の番号から選べ。ただし、回路は定常状態にあるものとする。
 48 [μJ]
 72 [μJ]
 96 [μJ]
120 [μJ]
問題図 H3408A01a
Fig.H3408A01a

 エネルギーの公式、コンデンサの電圧分割などの考え方を使えば比較的簡単に解けますが、複合問題と言えるでしょう。応用力が問われる問題です。

[1]コンデンサに蓄えられるエネルギー

 容量C [F]のコンデンサに電圧V [V]で充電した時、蓄えられているエネルギーW [J]は、次の公式で表されます。
 W=(1/2)CV2 …(1)
「これはもう公式なんで、覚えて下さい」と書いてしまっては、あまり面白くありません。私などは、「頭に付いてる1/2は何なんだ?」と気になって覚えられません。記憶だけに頼ると、他の公式とまぜこぜになって、すぐこの1/2を忘れてしまいます。
 また、このページは、1アマの問題を題材にして無線技術の基礎の勉強をするのが(一応の)目的なので、丸暗記するのではなく、少しでも本質に迫ってみようと思います。

[2]コンデンサに充電する、という物理的意味

 コンデンサにエネルギーが溜まる、というのはどういうことか、を考えてみます。平行平板コンデンサを考えて、両極板に電荷が蓄積(つまり充電)しないと、エネルギーが蓄えられないのは当然ですが、ここではエネルギー(=物理用語で「仕事」と等しい)を明確にするため、次のように考えます。
 コンデンサの静電容量はC [F]、両極の電位をV [V]、極板間隔をd [m]、極板間の一様な電界をE [V/m](=V/d)として、
  • コンデンサの両極は何にも接続されていない
  • コンデンサは最初は充電されていない
  • 電位の基準の電極(仮に負極)から微小な正電荷Δqを取出す
  • Δqを他方の電極(仮に正極)に向けて運ぶ
  • Δqは電界Eにより進行方向と逆向きの一定な力Fを受ける
  • Fの力を受けて距離dだけ運ぶ。これには仕事量ΔWが必要
  • 正極の電位は運ぶ前よりΔV、電界の強さΔE上昇する
  • この動作を極板間電圧がVになるまで繰返す
 というように考えてみることにします。実際には両端が浮いたコンデンサの電極の間で、一方から電荷を取出したりすることはできないので、頭の中での実験、すなわち「思考実験ということになります。
Fig.HA0309_a 微小電荷を運ぶ
Fig.HA0309_a
微小電荷を運ぶ
 Fig.HA0309_aにこの動作の様子を示します。この図の左が電荷Δqを動かす前、右が動かした後です。
 このようにして(目に見えない「小人」にお願いして)、少しづつ電荷Δqを何度も運び、最終的に両電極に±Q [C]の電荷が溜まって正極の電圧がV [V]になった状態と、普通に電源から充電してこの状態になったのと、物理的には全く違いはありません。つまり、どのような方法を用いても、コンデンサに溜まっているエネルギーはこの状態では同じです。
 Δqを1回運んだ後は、正極の電位がΔV(=Δq/C)だけ上昇しているので、次にΔqを運ぶ時は、電界がΔE(=ΔV/d)だけ強くなっていて、電荷を運ぶのに要する仕事はΔWだけ増加します。運べば運ぶほど、電界が強くなるので、一度に要する仕事量(コンデンサのエネルギーの増分)は大きくなります。
 そして、正電極の電圧がV [V]になるまでに「小人」さんがしたトータルの仕事Wが、コンデンサに蓄えられているエネルギーに等しい、というわけです。ではそのWは、どのようにして求めればよいのでしょうか?

[3]電荷を運ぶための仕事量の総和を求める

 Fig.HA0309_bにその計算方法を示します。横軸に蓄積されている電荷量Q [C]を取り、縦軸にはその時のコンデンサの極板間電圧v [V]を取ります。蓄積電荷量が多くなるほど、一回のΔqの運搬に要する仕事ΔW=「短冊の面積」が大きくなって行くのが分かります。
 一回に運ぶ電荷量がΔqなので、要する仕事量(=コンデンサに蓄えられるエネルギーの増加分)ΔWは、
 ΔW=Δqv=CvΔv …(2)
と書けます(Q=CVなので、Δq=CΔvだから)。この作業が終わる(vがV [V]になる)までに要した仕事の総量W [J]を求めるには、(2)式の両辺を積分すればよく、
 W=C∫vdv=(1/2)CV2 …(1)
となります。なお、vの積分範囲は0〜Vです。さらに、この式にQ=CVを代入して書き換えれば、
 W=(1/2)QV …(4)
Fig.HA0309_b 蓄積エネルギーの計算
Fig.HA0309_b
蓄積エネルギーの計算
となります。Fig.HA0309_bをみれば、水色の部分の面積を求めていることになりますが、「この面積を求めるのに積分まで持ち出すとは、なんと面倒なことを…」と思われるかもしれません。右下の水色の三角形を見れば、
 Wが、底辺の長さがQで、高さがVの直角三角形の面積
であることがすぐに分かります。なので、W=(1/2)QVと求めるだけで、積分など何も使わずに済むからです。
 ともあれ、この結果から分かることは、蓄えられるエネルギーは
容量が同じなら電圧の2乗に比例((1)式)
蓄えられている電荷量と極板間電圧の積に比例((4)式)
することが分かります(上の2つは、同じ現象を違った見方で見たものに過ぎません)。

[4]エネルギーが蓄積されている場所

 ちょっと横道にそれますが、このWなるエネルギーが蓄えられている場所はどこでしょうか? 電極?それとも誘電体? 「真空コンデンサ」なんていうものもありますから、真空にエネルギーが蓄えられるなんて考えにくいですが、電磁気学は明快に「極板に挟まれた空間である」と答えています。この辺は、分かりやすく書かれた本がほとんどなくて残念なのですが、電荷が全くなければ「電場(電界の及ぶ空間)」がなかったにもかかわらず、極板に電荷が溜まると、挟まれた空間に、電場という「それがない場所よりもエネルギーの高い状態を持った空間」が出現し、ここにエネルギーが蓄えられる、という解釈になっています。
 ならば、電荷の溜まったコンデンサから、誘電体のみを切り出してくれば、エネルギーが保存できるのでは?と考えますが、そんなことはできません。なぜなら、その電場を作り出しているのは極板に蓄えられた電荷であり、誘電体がそこ(極板間)から遠ざかってしまえば、もはや電場は誘電体のある場所には存在しないからです。

それでは解答に移ります。
 まず、この問題について「見通し」を立てましょう。
 与えられているのはC1両端の電圧と、各コンデンサの静電容量だけで電源の電圧は分かりません。ここで、電荷保存法則を思い出してみます。C1の下側電極とC2の上側電極は、他にどこにも繋がっていませんから、両者に蓄えられている電荷は、符号が逆で、大きさは同じはずです。つまり、C1とC2に溜まっている電荷量Q [C]は、同じはずです。これが大きなヒントになります。
 そこで、まず、C1とC2に溜まっている電荷を計算し、そこから両者に掛かっている電圧を計算すれば、各々に蓄えられている静電エネルギーが求められます。

 まず、両方のコンデンサに溜まっている電荷Q [C]を求めると、

 Q=C11 [C] …(a)

となります。次に、C2の両端電圧をV2 [V]として、上で述べた電荷保存則から、C2についての方程式を立てると、

 Q=C22 [C] …(b)

となります。(a)=(b)と置いて、V2について解けば、

 V2=(C1/C2)×V1 …(c)

となります。これで、2つのコンデンサの両端電圧と静電容量が求められますから、後は各々のエネルギーを計算して足せばいい、というわけです。
 まず、C1に蓄えられるエネルギーE1 [J]は、

 E1=(1/2)C112 …(d)

同様に、C2に蓄えられるエネルギーE2 [J]は、(c)式を使って、

 E2 =(1/2)C222
   =(1/2)C2[(C1/C2)×V1]2 …(e)

となりますから、2つのコンデンサに蓄えられているエネルギーE [J]は、

 E=E1+E2
  =(1/2)C112+(1/2)C2[(C1/C2)×V1]2 …(f)

と求められます。
 ここで、題意の数値、C1=10 [μF]、C2=50 [μF]、V1=4 [V]を(f)式に代入すれば、
 E=(1/2)[10×42+50×(10/50)2×42]=96 [μJ]
となりますから、正解はと求められます。