目次
集合住宅室内まで光ファイバ
 ■ 光導入以前編
 ■ 光通信能書き編
 ■ 光導入準備編1
 ■ 光導入準備編2
 ■ 光導入工事編1
 ■ 光導入工事編2
 ■ 光通信運用編1
 ■ 光通信運用編2
 ■ 光通信運用編3
 ■ Q&A ファイバと通信
 ■ Q&A 集合住宅に光
 ■ Q&A 導入準備と工事
宅内に家庭内LAN敷設工事
 ■ 家庭内LAN編1
 ■ 家庭内LAN編2
 ■ 家庭内LAN編3
 ■ 家庭内LAN編4
 ■ 家庭内LAN概要(別窓)
 ■ Q&A 家庭内LANとは
 ■ Q&A ケーブルと配線
 ■ Q&A 配線工具と材料
 ■ Q&A 隠蔽配線と工法
おまけ&リンク集
 ■ PC自作編
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家庭内LAN編2 ファイバ切断と移設
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 いよいよ住戸内のLAN工事を開始します。その前に、私が準備した道具類と材料、そしてそれらを用いた工法に付いて、ご紹介しています。
 勇んで工事を開始したものの、南北領域を結ぶ通線中、いろいろとトラブルがあってうまく行かないところへもって来て、イライラが昂じて力任せにケーブルを引っ張ったところ、光ファイバを切ってしまうトラブルに見舞われました。これで大きく出鼻をくじかれ、計画も変更になってしまいました。皆様、絶対に真似をなさらぬよう…
 その後、他の箇所の工事の進捗とともに洋室1と浴室天井裏とを結ぶ「バックボーン」が必要となったため、ファイバ切断時に引いた仮配線を取り外し、いよいよ全室通線に向けて足場固めに入りました。

 「記事の分量が多すぎて、どの場所で何をやっているのかわからない」という方のために、家庭内LAN工事の概要を作りました。

[ご注意下さい]
 家庭内LAN編で行なっている、屋内の電力線や電話線の工事にはそれぞれ、電気工事士・電気通信工事担任者の資格が必要です。ご自分で工事される際は法令違反のないよう、ご注意ください。私はペーパーライセンスですが両方保持していますので、自分で行なっています。
 お約束、ですが、本ページの情報は自己の責任において御利用下さい。特に、白熱電球や換気扇ダクトなど発熱体、高温体の付近へのネットワーク配線、浴室など高湿となる場所への電力線の配線などを行なっています。埋込みモジュラー設置のため、壁にも穴をあけています。ご自分で行なわれる際は、相応のリスクを負うことを御承知置き下さい。
 また、古い住宅では、アスベストにご注意下さい。

「家庭内LAN編2」の目次

1 工具の準備
  □ 1-1 線を通すための工具
  □ 1-2 壁裏を探るための工具
  □ 1-3 穴をあける工具
  □ 1-4 見えない所を見るための道具
  □ 1-5 その他の工具・道具
2 材料の準備
  □ 2-1 カテゴリ6 LANケーブル
  □ 2-2 LAN用埋込みモジュラー
  □ 2-3 埋込みコンセント・パネル等
  □ 2-4 その他の材料・機材
3 工法(我流につき注意)
  □ 3-1 通線ワイヤの使い方
  □ 3-2 パネルボックスの設置方法
  □ 3-3 ぐっとす6の工法
  □ 3-4 簡易な石膏ボードの養生
  □ 3-5 カテゴリ6用RJ-45プラグ取付
4 光ファイバの切断と南北通線
  □ 4-1 光ファイバが切れた
  □ 4-2 光ファイバの修理工事
  □ 4-3 南北相互領域の通線
  □ 4-4 機器類の移設・配線変更

工具の準備

 自分でやるには、あまり使用頻度の高くない工具に高額な出費はできないが、かといって道具なしでは作業ができないこともある。
 今回は、必要最低限の工具を購入した。最初の時点では、松下電工のぐっとすシリーズの埋込みモジュラージャックでは、かしめ工具は必要ないため、高価なかしめ工具は購入しなかった。浴室天井裏に、ハブを設置するので、その時にケーブルを加工する必要が出てきたので購入した。その他、高価だった工具は、CD管を引いたので必要になった通線ワイヤや、壁内を垂直に天井裏まで上げて行くためのジョイント呼び線などだ。
 通線しづらい集合住宅の壁内を相手にしたので、結果的にずいぶんな出費になってしまった。私は知り合いに電気屋さん、電設工事屋などがいないので、購入せざるをえなかったが、知り合いにこの手の職業の方がいるなら、休日だけでも貸してもらうことをお勧めする。一度の工事のためだけの出費は無駄である。

□ 1-1 線を通すための工具

□ 通線ワイヤ(通線工具、呼び線、スチール等の呼称あり)−通線の主役

通線ワイヤ ジェフコムBX-4030
Fig.1-1

通線ワイヤ ジェフコムBX-4030

 曲がりがゆるくて短めのCD管なら、専用工具でない硬めの鉄線(スチール線)や少し腰の強いケーブルであれば、工具なしに通ってしまうこともある。
 我が家の南北を結ぶ(光ファイバの通る)CD管1の場合、工事の時に見ていたので、かなり曲がりくねっているようだったので購入した。
 Fig.1-1はジェフコムのBX-4030という製品(全長30m)で、秋葉原の愛三電機で\4,200ほどだ。ケース付きなのでバラバラにならず、便利だ。
 使い方は簡単で、最初にこの線を通しておいて、ヘッドの部分の輪にケーブルを引っ掛け、入れた側から引っ張る。曲がり癖が付いているので、転がし配線の場合は、このワイヤを引っ掛ける道具と組み合わせて、短距離なら通せる。直進性は後に挙げたジョイント呼び線の方が優位だ。
 通線ワイヤを選択する時、気をつけなければならないのは、管が細いという理由で線径の細い物を選んでも、ヘッドの取り付け部分の金属部分が太いので、最低でもこれだけの径は通る管でなければならないことだ。
 通線工具を使わず他のもので代用する場合に注意したいのは、AC系の配線に触れて感電する危険があるので、既存の住宅で通電個所がある場合は、樹脂製の腰の硬いロープ状の物にした方が良いという点だ(後に、ご参考までにグラスファイバの応用製品をご紹介)。


□ ジョイント呼び線−直進性と繋いで延ばせるのが特徴

 前に挙げた通線ワイヤはお目にかかったことがあるかもしれないが、このジョイント呼び線は、かなり専門的な工具になると思う。秋葉原の愛三電機でも常備在庫にはなかったように思う。
 この呼び線は、その呼び名の通り、どんどん繋いで伸ばしてゆける呼び線だ。何がメリットかと言うと、通線ワイヤは「巻物」であるので、曲げ癖がついているため、壁内の比較的自由な空間では、その癖に従ってしまい、直進できない。
 ところが、この呼び線は元々が直線なため、壁の下部にあるコンセント穴から入れて、垂直に天井裏まで通すことができる。下から押し入れて行けば真っ直ぐ上に上がって行くので、天井裏に出たところで(他の道具で引っ掛けて)引っ張ってくれば通線可能だ。
 その他にも、1本の長さが決まっているので、何本入れたかで必要なケーブルの長さがわかることや、呼び線中に「より」ができてしまった場合、よりを戻しやすい(通線ワイヤの場合は、ケースごと回転させなければならない)、などのメリットがある。
ジョイント呼び線 ジェフコムJB-1505
Fig.1-2

ジョイント呼び線 ジェフコムJB-1505

 「たかが素人の工事に、ここまで要るのかよ」と思われる向きもあるかもしれない。それなら、通線ワイヤ同様、電気屋さんなどに借りてもよい。確かに1回しか工事しないのであれば、大変な無駄だ。ただ、集合住宅の場合、先行配管がなければ大半が壁内や転がし配線となるので、これがあれば大変楽になる。私の場合も、壁内の配線はこれがなければ不可能だった。

□ グラスロープ−細いところ、感電の危険があるところはこれで代用

通線ワイヤの代用品 デベグラスワイヤ
Fig.1-3

通線ワイヤの代用品 デベグラスワイヤ

 Fig.1-3は元々無線で移動運用に行った時に、アンテナを高く上げる場合のステー用に買ってあったもので、今回の家庭内LANのための購入したものではない。腰が強くて絶縁性で長いロープ状の物で強度があって…ということで思いついたものだ。
 手持ちのものはグラスファイバ工研の、デベグラスワイヤー5mmφで、購入当時の値段は忘れたが、現在は30mの定価で\3,000ほどだ。ホームセンターなどでは売られていないが、無線機屋さんの通販などで手に入る。この製品にこだわらずとも、樹脂製の腰の硬めのものなら何でもいいだろう。
 写真のように切り落としたままの先端形状では、曲がりの部分で引っかかりやすいので、切るか削るかして丸みを帯びた形状にしておくのがよいと思う。

□ 1-2 壁裏を探るための工具

□ 下地探し1−石膏ボード等の壁の裏を探知する

シンワ 下地探しどこ太L マグネット付き
Fig.1-4

シンワ 下地探しどこ太L マグネット付き

 次に近くのホームセンターで購入したのが、シンワ測定の「下地探しどこ太L マグネット付き(Fig.1-4)」だ。値段は\1,200ほどだった。これは何をする道具かといえば、壁が石膏ボードやベニヤ板など柔らかい素材でできている場合に、壁裏の間柱を探すためのものだ。また、天井に入っている野ぶち(天井の板=石膏ボードを支えている柱)も探すことができる。
 使い方(Fig.1-5)は簡単で、柱が木の場合は壁や天井に押し当てると先端から細い針が出るが、行く手に柱があれば板の厚さ以上は進まなくなり、何も無ければ手ごたえ無く針が入って行く、というものだ。
 針の太さは細いので、壁紙に空いた穴はほとんどわからない。
 柱が鉄骨の場合は、磁石が先端に付いているので、これを利用する。最初に本体を手前に傾けておいて磁石を手前に置いておく。そのまま壁に先端をつけて(押さずに)左右にスライドさせれば、柱のある位置で磁石が「カチッ」といって壁に吸い付く。これなら傷は付かないが、ミリ単位での位置はわからないので、埋込みボックスを設置する場合などで、正確な位置を知りたい時は、針での探知に切替える。
 磁石なしの分安い製品もあるので、住戸の造りが軽量鉄骨でなければ、磁石はなくてもかまわない。
どこ太の使い方
Fig.1-5

下地探しどこ太の使い方

 余談だが、これの意外な使い方を知ったのでご紹介する。家具に耐震補強をする場合、壁に木ネジなどでベルト等の補強具を取り付けることがある。
 この時、下地に柱が無いと、ネジは家具の揺れに引っ張られて、そのまま引っこ抜けてしまい、全く用を成さない。なので、この手の道具で下地に柱がある場所を探し、そこに耐震補強具を固定するというものだ。

□ 下地探し2−石膏ボード等の壁の裏を探知する(ハイテク版)

壁裏チェッカ
Fig.1-6

壁裏チェッカ

 入居当時、上に書いたような壁の裏の事情を全く知らなかった私は、ヒートンをねじ込んでハンガーをかけたら、しばらくして抜け落ちてしまった経験を持つ。
 このため、買ってきたのがこの壁裏チェッカなのだが、「どこ太」クンのように針で刺すようなものでないため、なかなか正確な位置がつかめず、お蔵入りになっていたものだ。最近の物はいろいろ機能がついて、精度も上がっているだろうから、もしお持ちの方が居られればわざわざ「どこ太」のような道具を新調する必要はありません、という意味で掲載してみた。
 この使い方も簡単で、本体の左ボタンを押しながら壁上を左右に動かせば、両脇のLEDが点灯し、直下にくれば真中の2色のLEDのうち、柱の素材に応じた色の方が点灯する。
 当時、「軽量鉄骨」というものを知らなかった私は、マンションの建設会社からその存在を教わるまで、周期的に点灯する「金属」の表示が信じられず、故障と信じて疑わなかった。無知は恐ろしい。

□ 1-3 穴をあける工具

□ 石膏ボード壁に穴をあける−廻し挽き鋸とファイルソー

ファイルソーと廻し挽き鋸
Fig.1-7

ファイルソーと廻し挽き鋸

 この2つの工具は、壁の穴あけに使う工具だ。壁に埋込みコンセントを増設する場合に活躍する。
 廻し挽き鋸は、板の中に穴をくりぬいたりするので、お持ちの方も多い一般的な工具だ。一方、ファイルソーは壁の穴あけにほとんど専用の工具なので、お目にかかる機会は少ないが、ホームセンターなどで数\100で手に入る。
 初めてファイルソーを見かけた時は、こんな便利なものがあるのか、と思った。石膏ボードは軟らかいので、これがあれば、穴をあけるだけなら数秒で終わる。電動ドリルなどは必要ない。まず、先端にあるドリル部でぐりぐりしてゆくと穴があき、そのままヤスリの部分でその穴を広げてゆく。穴の大きさの調整も、ヤスリ部を使えば簡単だ。
 これは私の我流のやり方かもしれないが、埋込みコンセント用の穴をあける時は、まず、ファイルソーで四隅にケガキ線に内側にL字に穴をあけ、その穴を廻し挽き鋸で結ぶ。
 詳しくはこの後の工法−パネルボックスの設置方法で紹介している。
 もし、これらがないときはどうするか? 実際やってみたことがないので想像だが、電動又は手動のドリルで、ケガキ線の内側を穴が接するように多数の穴を開ける。四辺とも開いたら、それらの穴をカッターや細い棒状のやすりなどで繋ぐようにしていく。大変に時間のかかる作業だが、これでできないことはないと思う。

□ 軽量鉄骨に穴をあける−普通の電動ドリル

 ごく普通の電動ドリルだ。家庭内LANの工事にはまず必要ないが、点検口など、大きな穴をあけたり、固いものに穴をあける際には必要だ。うちの場合は、浴室の天井裏にコンセントを設ける際に、軽量鉄骨に穴をあけるのに一度だけ使った。
 余談だが、うちのこの電動ドリルは速度可変ができない。いきなりフル回転で回るので、硬い材料に穴をあける場合は、準備としてポンチ打ちが必須である。天井裏のコンセントは、手の届きにくいところに設置せざるを得なかったので、軽量鉄骨にポンチ打ちなしであけたら、ずいぶん位置がずれた。「軽量」とはいえ鉄は鉄である。
 速度可変があると、最初のうちは低速回転で回して、皿状に削れたらフル回転で回す、という調節ができるので、価格は高いが便利だ。
一般的な電動ドリル
Fig.1-8

一般的な電動ドリル

□ 1-4 見えない所を見るための道具

 LANを始めとして電話も電灯線もそうだが、屋内の工事なので照明が必須だ。また、壁の中や天井裏といった、直接目で見えないところは、目の代わりになってくれるものが必要だ。おまけに、一人で工事をやる時は、通線の相手方である、送り出し側か引き出し側のどちらかをいちいち見に行かなければならない。これは面倒だ。ここでは、\100ショップで手に入るものも含めて、素人工事で使えそうなものを集めてみた。

□ 壁の中を見る−手鏡とペンライト

 Fig.1-9に挙げたものはみな、\100ショップで購入したものだ。レジのお姉さんに、よからぬことに使うのではないかと思われるが、女性が使う手鏡と歯医者さんの使うようなミラーも\100だ。
 右から2番目のロッドアンテナのようなものは、先端に磁石が付いていて、手の届かないところに落ちてしまった鉄の部品を拾い上げるのに使う。実際、石膏ボードとコンクリート壁の間に落ちてしまったC型金具を、これを使って手探りで拾い上げた。
 そして一番右はペンライトだ。普通の懐中電灯でも使えないことはないが、壁の中に入れて直接照明するには、この手の細いものしかない。最近は先端に光ファイバが付いたものもあるようだが、高価なのでやめた。
手鏡・(歯医者さん)ミラー・ペンライト
Fig.1-9

手鏡・歯医者ミラー・磁石・ペンライト

 これらはみな、壁の中にアクセスするために購入した。壁内配線には必須だ。次編の「北西柱への通線工事」で詳しく書いているが、コンクリート壁と石膏ボードの間は、軽量鉄骨ではなく、セメントの「塊」のようなものをつぶして、支えていた(我が家の場合)。
手鏡の使用風景
Fig.1-10

手鏡の使用風景

 このため、見える範囲でどこにその「塊」があって呼び線が通らないのか、把握しておく必要がある。また、部屋間の壁でも、軽量鉄骨の位置やAC配線との距離など、見て確認すべきことは多い。
 使い方だが、私はFig.1-10のように手鏡を使う時は、開けた穴(もしくは既存の埋込みコンセントの穴)に差込み、ペンライトを視線とほとんど同じ方向にして手前から照らしている。このあたりは試行錯誤でコツを掴む他ないが、視線とペンライトや懐中電灯などの光軸が近ければ近いほど、奥までよく見える。歯医者さんミラーは奥まで入るのが利点だが、視野が狭くなるので、狙ったところを見るのが難しい。基本的な使い方はどちらも同じである。
 この写真のように、サイズの小さい手鏡を使って、コンセント穴の奥まで入れて見れば、かなり多くのことがわかり、通線の確率も上がるだろう。
 床下を見る時は、床に寝転がって、ミラーを自分より高い位置に持って来る。コンセントより上方を見る時は普通に座って見ればよい。

□ 暗い天井裏の作業に必要な照明具

 これは私が無線の移動運用に行く際、夜間の運用のために買ったクルマ用の蛍光灯と無線機用の電源のバッテリーだ。この組合せでなくとも、照明はぜひともあったほうが良い。
 なぜなら、天井裏は暗い。おまけに、軽量鉄骨はシャープエッジ(切断面を面取りなどしていない)なので、ダウンライト穴などから手を突っ込んで何がどこにあるか分からないまま、手探りだけで作業をするとエッジで怪我する。
 また、この後に挙げる一人作業時のビデオモニタの光源にもなる。最初は懐中電灯を使っていたのだが、ポイントしか照らせず、イマイチだった。やはり、「面」で照明できる器具が良い。
無線用のバッテリーと12V蛍光灯
Fig.1-11

無線用のバッテリーと12V蛍光灯

 かといって、この蛍光灯もかなり細長く、上階スラブがすぐ上で、穴も小さいダイニングのダウンライト穴からは、完全には入らなかった。そういうところは懐中電灯しかない。
 バッテリーや乾電池を使うと便利なのは、安全のためにブレーカを切って作業する際にも明かりが使える、という点だ。市販の工事用電灯(100V電球)だとそれができない。

□ 一人での通線作業に必要なハンディカムとTV(モニタ)

ビデオカメラとモニタTV
Fig.1-12

ビデオカメラとモニタTV

 一人で作業する時はこれが重宝する。ビデオカメラをダウンライト穴などから入れて天井裏やCD管の出口側に置き、(もちろん上に挙げたような光源で照明して)線が出てきそうな方向やCD管の口に向けておく。モニタを手元に置き、ビデオの映像出力を長い延長ケーブルでつなぐ。通線ワイヤを押込みながら、ヘッドが出たかどうかを確認する。
 二人でやれば、声をかけながらやれるが、一人だといちいちワイヤが出たかどうか、確認に行く必要がある。
 うちのビデオカメラは一昔前のもので、本体もバッテリーも大きく、ダウンライト穴に入らないことがあった。そんな時はバッテリーを外してACアダプタ駆動にすると本体が小さくなる。ビデオカメラが入らないような狭いところは、デジカメのビデオ出力でもいい。どちらも、時間が経つとオートパワーセーブなどで電源が切れたり画像が出なくなってしまうものは、その設定があれば切っておく必要がある。
 また、延長ケーブルは5m程度は必要だ。
□ 1-5 その他の工具・道具

 その他の、あると便利な工具、副材料類である。ここに挙げたものは特殊なものもあるので、なければ他のもので代用してみるといいかも知れない。それも素人工事の楽しみのひとつ?

□ 壁内の物体を手元に引き寄せるピッカー\100

 床下を通線したり、天井裏でも手が入らないほど狭いところで、目では見えているものの引っ掛ける道具が入らない、といった場合に使える。スプリング状のパイプの中にボタンを押して出入りできるようにしたワイヤが入っており、手元のボタンを押すとFig.1-13下のように先端で爪が開く。
 これも、手鏡や歯医者ミラーと同様\100ショップで見かけたものだ。ホームセンターでも同様のものは売られているが、\2千前後する。
 但し、やはり高価なものはそれだけ頑丈に作られており、多少の力をかけても大丈夫そうだが、\100のものはやはり先の「爪」が細い、中心ワイヤと爪との結合部分にガタがあるなど、やはり「それなり」である。このあたりは、価格に納得して使うしかない。
手の届かない所の物を拾うピッカー
Fig.1-13

手の届かない所の物を拾うピッカー

 使い方としては、床下を通ってきたジョイント呼び線を手鏡などで位置を確認し、これを下に突っ込み、引っかかるまで何度も爪を開いたり閉じたりして、引っかかったら引き上げる、といった感じだ(さらにいえば、ヘッドの先に水糸をつけて丸めておくと、爪が引っかかる確率が上がるのでよい)。

□ きつい部分の通線に塗る潤滑剤−「デンサンウエット(R)」

入線潤滑剤デンサンウエット
Fig.1-14

入線潤滑剤デンサンウエット

 通線工事は素人なので、何が要るのか分からず、こんなものまで買ってしまった…と、最初は思ったのだが、最後の方で役に立った。
 これは、入線の際にケーブルに塗ることで、摩擦が減少し、スムーズに通る、という謎の(?)液体だ。無毒・無臭でケーブル被覆などにも影響がない材料でできている(らしい)。これまた愛三電機で\1,500ほどだ。家庭内LAN程度の短距離ならば、そんなに抵抗も大きくないので、不要かもしれない。
 使い方は単純だ。薄黄色のドロッとした液体で、ボロ布に少しとって入線直前にケーブルに塗るだけだ。作業しているいるうちに乾いてくるが、乾いても潤滑性能にあまり変化はないので心配ない。ということは、管の中に入った後も滑りが良いので、追加通線する際も作業が楽になるという効果がある。
 実際に使ってみたが、確かにケーブルのすべりは良くなる。ケーブルを管に通す時のみに有効で、転がし配線に使う意味は全くないことは、言うまでもない。
 滑りが良くなるなら…といって、食用油や機械油を塗ってはいけない。これらは、ケーブルの被覆に化学変化を起こさせることがあり、最悪、時間がたつと被覆がボロボロふにゃふにゃになってしまう可能性がある。CD管の側に対しても同様だ。

 これらの他にも、ドライバーやニッパ、ケーブルや通線工具を引っ掛けて引き寄せるために曲尺等を応用したりするが、それらは一般的な工具なので、作業の際に必要になれば工具箱から引っ張り出してくればよい。アイディア次第で、どんなものでも工具として使える。
 ただひとつ、誤った使い方をしないこと。感電、怪我など事故に繋がることもあるし、壁を壊してしまうかもしれない。脚立などに乗って行なう高所作業もあるから、転落の危険もある。あくまでも基本に忠実に施工したい。


材料の準備

 工具の次は材料だ。ケーブルと埋込みコンセント、その他配線材料を購入した。ネットワーク系の物品はやはり品揃えと在庫で愛三電機なのだが、AC100VやTV配線の部品はホームセンターの方が充実しているように感じた。
 平日の昼間などは、工事現場で働いている方が買いに来られるからなのだろうか?

□ 2-1 カテゴリ6 LANケーブル

□ カテゴリ6ケーブル−愛三のはあまり硬くない「アキバブランド」

愛三電機製Cat.6ケーブル100m 青
Fig.2-1

愛三電機製Cat.6ケーブル100m 青

愛三ケーブルは「AKIBAブランド」
Fig.2-2

愛三ケーブルは「AKIBAブランド」

 材料の選定はまず、ケーブルだ。
 最近は、露出配線でもドアの下などの隙間を利用して配線できるように、と極細のケーブルもあるが、電線が細くて損失が大きく、また撚っていないものもあるためノイズに弱く、家庭内LANの固定配線としてはあまりお薦めできない。
 ここで選んだのは、愛三電機が出しているカテゴリ6のケーブル(Fig.2-1)だ。型番はAFC6-0508である。これは、かなりしっかりしたつくりだ。最近、十字介在を省略したケーブルも時々見かけるが、これはしっかり入っている。ただ、介在は柔らかい素材でできており、作業していてその硬さが問題と感じたことはない。しいて言えば、急に曲げられないので、埋込みボックスの中で余長を処理するのに工夫が要ることくらいだ。
 長さは、家庭内に引くなら、モジュラーの数、通線経路にもよるが、まず100mあれば足りるだろう。うちはマンションなので、長さを見積りもせずに購入したが、計画が大きくなって買い足した。大きな家の場合や多くの場所に引き出す場合、家の設計図などから長さを正確に見積もった方がいい。その場合、敷線経路の高さ方向を勘定に入れるのを忘れずに。
 愛三のケーブルは「AKIBA」ブランド(Fig.2-2)で、店頭で見た時は、思わずそそられてしまった。なお、このケーブルに使われている芯線は、「単線」だ。単線とは、中の8本の電線の芯線がそれぞれ1本の銅線である、ということだ。単線の反対語は複線ではなく、「撚線(よりせん)」である。細い銅線が何本か束になっている線、ということだ。より線よりも単線の方が伝送特性が良好である。
 エンハンスドカテゴリ5などでは単線と撚線のものがあり、コネクタなども違うので注意が必要だ。下に述べる、ぐっとす6は単線用でケーブルも単線なので、問題ない。
 なお、LANケーブルは「あ、長さが足りない」と気が付いてもハンダ付けなどで継ぎ足すことはできない。そこだけインピーダンスが狂い、反射・波形ひずみが生じて、エラーレートが上がる(=速度が落ちる)からだ。このため、長さの見積もり時には、常に長めに取っておき、余ったら切るようにする。ハギレがたくさん出るが、パッチケーブルにでもしてしまうのがいい。
□ 2-2 LAN用埋込みモジュラー

□ 専用カシメ工具なしで接続できる−松下電工「ぐっとすシリーズ(R)」

松下電工 埋込みCat.6モジュラ ぐっとす6
Fig.2-3

松下電工 埋込みCat.6モジュラ ぐっとす6

 松下電工の屋内配線器具のコスモシリーズワイド21とデザインが統一されている埋込みモジュラーだ。型番はNR3170Wである。ケーブル接続の際、かしめ工具が不要で、付いているケーブルカバーで線を「ぐっ」と押し込み、余分な線をニッパで切れば出来上がり、のスグレモノである。今回は、5箇所程度配線するつもりで、10個入りの箱を買ってきた。これで\12,000ほどするから、ケーブルと合わせて\17,000以上の出費だ。
 正面のシャッターはコネクタを外すとバネでシャッターが閉まるようになっている。他の製品よりバネが強めで、「パチッ」という感じで、ガタツキもなく、しっかり閉じる気がする。
 具体的な手順は箱に書かれている。松下電工のサイトにもあるから、詳細にはそちらを参照して欲しいが、一応我流ながら、この後にも工法を掲載している。
 Fig.2-4の青く見える部分がケーブルのカバーで、これを外すと簡易の押し込み治具になっている。
 Fig.2-4の青いカバーの下には電線の挟み込み口があり、ここに表示の色の電線を挟んで、押し込み治具でぐっと下まで押し込めば、配線完了だ。この時、最後まで押し込むとクリック感があるので、そこまでしっかり押し込むことだ。8本の線について全て行なったら、押し込み治具をカバーとして取り付ければ終了だ。
ぐっとす6の接続側
Fig.2-4

ぐっとす6の接続側

 この埋込みジャックは、コンセントプレートへの取り付け部分がJIS規格で作られているので、取付け枠やパネル等が他社製品でもJIS規格品なら取り付けは可能だ。
 このぐっとす6、よく見てみると、コネクタ側の接触部分からケーブル側への信号伝送基板に「ガラスエポキシ基板」(通称ガラエポ基板)を使用している。ガラエポ基板は良く使われる紙エポキシ等に比べて高価だが、このあたりはやはり一流メーカー品だな、と思ってしまう。だからといって転送速度が上がるかどうかは不明だが。
□ 2-3 埋込みコンセント・パネル等

□ 壁面埋込みの設置に−松下電工「コスモシリーズワイド21(R)」

 埋込みの配線器具は、うちのマンションの場合、松下電工のニューコスモシリーズが使われている。今では、このシリーズは生産中止になってしまい、コスモシリーズワイド21が同シリーズの後継となっている。
 Fig.2-5は、コスモシリーズワイド21のスイッチパネルと取り付け枠で、壁に穴を開けて埋込みモジュラーを作る際に必要になるものだ。既存のコンセントに同居させてしまうなら不要だ。
 特に(生産中止の)ニューコスモシリーズ特有の構成だが、枠の他に内側の化粧パネルも必要だ。化粧パネルはホームセンターなどではまず在庫していないので、注文で取り寄せた。1〜3個口用がある。こだわらなければ、現行のワイド21で十分だと思う。
 右下にある石膏ボード用の取付金具は、「はさみ金具」といって、壁とコンセントパネルを挟みつける方法で固定するものだ。壁の中に埋込みボックスを設けずにコンセントを設置できるので便利だ。
コスモワイド21のパネル・枠等
Fig.2-5

コスモワイド21のパネル・枠等

 実は、施工方法によっては、既存のコンセントを取り外した時に、この金具が必要になることがある。
 どういうことかというと、内装施工業者がコンセントの取付穴をあけた時、奥にあるコンクリート埋込みボックスと位置がズレてしまったため、そのネジ穴に取付枠のネジが入らなくなってしまうということがある。そういう場所に、埋込みボックスとは無関係にネジ位置が決められる、この挟み金具を使っているのだ(ウチでは今のところ2箇所あった)。
 それを知らずに、ネジを外していて、「なんだかふわふわしておかしな手ごたえだな」と思った次の瞬間、「チャリーン」という音を立てて、この金具がコンクリ壁と石膏ボードの空間を落下してしまうことが実際あった。写真の金具では、石膏ボードに巻きつけるような棒が出ていて、ネジを外しても落ちることはないが、単純なCの形をした金具もあって、それは全く無防備だ。こうなってしまったら二度とコンセントが元の位置に戻らなくなってしまうので、そんな時にこの金具の出番だ。事が起きる前に買っておいた方がよいかもしれない。
 一方、右の写真(Fig.2-6)は、このシリーズで、カテゴリ6のモジュラーとAC100Vコンセントと同居(*1)させて設置する例だ。コスモシリーズワイド21とニューコスモシリーズは微妙にパネル構成が違うため、化粧カバー(Fig.2-6真中の白いプレート)が必要になる。
 まず、AC100Vコンセントやぐっとす6を配線したあと、絶縁取付枠にこれらをはめ込む。絶縁取付枠(Fig.2-6の左の灰色の枠)には上下の区別があり、ぐっとす6には表面の'LAN' 'CAT6'の文字の向きがあり、さらに全体の取付枠(Fig.2-6の左の白い枠)にも上下の別がある。絶縁取付枠は再利用可能なので、間違えたら外せばいいが、最初から注意するに越したことはない。
ニューコスモの組合わせ方
Fig.2-6

ニューコスモの組合わせ方


(*1) 電力線と信号配線を1つのコンセントで共存させる時は、内線規定により、両者の間に絶縁隔壁を設けるように勧告されているので注意する。

□ 石膏ボードに埋込むボックス−未来工業のパネルボックス

未来工業のパネルボックス
Fig.2-7

未来工業のパネルボックス

 Fig.2-7は、石膏ボードに穴をあけて新規にコンセントを設ける場合に使うもので、未来工業のパネルボックスというものだ。1個用がSBP、2個用がSBP-Wという。ホームセンターなどで普通に売られているものだ。
 ネジを回すと「耳」が出てきて、その耳がネジを回すにつれて手前にスライドしてくる。耳と本体の枠で石膏ボードを挟み込んで固定するようになっているものだ(どらあいさんのページ「LAN工事ドットコム」に詳しい解説がある)。軽量鉄骨造にコンセントを付けるなら、タッピングネジ付きで鉄骨に固定するボックスもあるが、今回の場合、コンクリート壁に面した石膏ボードには軽量鉄骨が入っていないため、これを使った。
 Fig.2-7のように「箱型」ではなく、枠だけのような製品もあり、ケーブルの余長を長く壁内に納めたい場合などに便利な上、あとで工法の所で書くが、ケーブルがぐっとすを出た直後で折れなくてよい。

 この他、モジュラーが6個入るパネルのうち、5個だけを使う場合に残りの1個にに蓋をしておくブランクチップなど、細々した物も必要になる。これらは、最近ではホームセンターでも売られているので、ぐっとす6やニューコスモの化粧板以外は、入手に問題はないだろう。
□ 2-4 その他の材料・機材

 これまでに挙げたものの他、目に見えない部分に配置する部材や副材料、細々した部品が必要になる。これらは、一般家屋の建築材料なので特殊なものではなく、一つ一つは安価だが、結構数が要るので、出費もばかにならない。工事をやり始めると、「あれが足りない、これも必要」と次から次へと出てきて、ホームセンターへ走ることになるから、できれば、あらかじめ数を見積もっておいて、予算を確保した上で揃えておいた方がよい。

□ 通り難い経路を楽に通線、仮配線−CD管・紐

[ご注意]
 家庭内LAN編全てにおいて、「CD管」と称する物は本来、コンクリート埋込みでの使用を前提としたものであって、露出(転がし)配管用のものではありません。すなわち難燃性の素材ではありません。露出配管で、難燃性を必要とする場合は「PF」管という、難燃性の規格を満たしたものがあります。
 但し、電力線に用いない(管にAC100Vのケーブルを通さない)場合は、法律的にはPF管である必要はないようです。価格もあまり違わないようなのですが、近くのホームセンターでは売っていなかったので、今回はCD管を使っています。
CD管22mmφ 6mとポリエチレン紐
Fig.2-8

CD管22mmφ 6mとポリエチレン紐

 CD管は、ホームセンターでも売られている。購入したものは内径が22mmで、浴室からダウンライト2までのおよその距離にたるみ分を加えた6mだが、\300でおつりがくるほど安いものだ。これだけの太さがあれば、カテゴリ6でも3本は優に入る。4本目以降は後から入れるのは難しいが、通線工具と潤滑材で、5本までは何とかなった(今回のケース)。
 CD管の色だが、なるべく明るい色のものがいい。というのは、天井裏は暗いので、わずかな明かりでもどこにあるかが分かるようにするためだ。
 紐は、後に通線ワイヤなしでも引けるように、最初に通線する何本かと一緒に引いておくためのものだ。強度があって安いものがよい。この紐は\20/mで20m買っておいた。
 工事の手順によっては必ず必要となるものではないが、あるといざという時に便利なものだ。追加通線の予定があるのなら、通線の際に、紐とケーブルを一緒に引いてしまうようにするとよい。

□ 目立たずにケーブルを隠す−ケーブルモール

 どうしても露出配線となるところにはモール(ケーブルカバー)を使う。昔は単純な白や茶色といった、そのまま取り付けたのでは目立つものがほとんどだったが、最近は色違いの木目や壁紙そっくりの模様などといった、バリエーションが出てきている。
 我が家は幅木(床と壁の境目の、壁側の立ち上がりの部分)の色がかなり濃い茶色(Fig.1-1の床の色と床に接する壁部分の色)だ。これにそっくりの色のモールが売られていたので、とりあえず3本買ってきた。1本は呼び線を引っ張ってくるのに使ってしまって傷だらけになったので、残りがこの2本(Fig.2-9)だ。この2m品は1本\600足らずだ。ちなみに、茶色の色の濃さによって、ダーク(このモール)、ブラウン、ライトと3種類ある。最近の住宅では、フローリングの色に合わせて幅木がついているから、最も近い色を選ぶとよい。
ダークブラウンのモール2m
Fig.2-9

ダークブラウンのモール2m

ドア枠との色比較
Fig.2-10

ドア枠との色比較

 色を合わせて選ぶコツは、実際に家の中の照明で部材と並べてみることだ。店内の照明と自分の頭の中にある色の記憶ほどあいまいなものはない。いきなり必要な分の材料を全部買ってくるのでは色が合わなかった時のリスクが大きいから、まずは、同じ柄や色で「曲がり」の小さな部品が売られていれば、それを買ってきて合わせてみる。それがなければ、試しに一本だけ買ってきて合わせてみる。
 微妙に色が違うことがある(Fig.2-10)が、これ以上は追求しても(素人の手に入る材料の中では)解がないので、妥協することにした。

 ちなみに、モールに何本ケーブルが通るかは、あらかじめ調べておいた方がよい。配線計画に影響してくるからだ。壁用モールの太さは号数で呼ばれており、一般的には0号〜2号がある(らしい)が、0号はあまりお目にかかれない。
 今回は、「2号」を使ったが、これには無理やり入れれば愛三のCat.6は3本入った。但し、この状態では「身」側のモールがちょっと開いた感じになり、「蓋」をするにも無理に押し込む感じだ。エンハンスドカテゴリ5なら余裕で入るのだが…

 また、一般に売られているものは、「身」側の底面に両面テープが付いたものが多い(Fig.2-9もそうだ)が、テープの粘着材は必ず経年劣化する。ケーブルを多く入れて何年か経つと、モールごとゴソッと落下するだろう。これを避けるにはテープを使わないことなのだが、相手が石膏ボード壁の場合は、太い釘は打てない。ほとんど目立たないピンほどの細い釘を何本も打つ方法で施工した。具体的にはLAN編4を参照していただきたい。

□ 複数箇所の接続に必須…スイッチングハブ

 一般的な有線ブロードバンドルータは、スイッチングハブ機能を持っているが、ポートが多くは4個しかない。家庭内LANなので、そんなに多くのポートを必要とはしないが、今回の場合、住戸が南北に分断されていて、そこを1本の「バックボーン」で接続するため、どうしてもハブが2台以上要る。
 そこで、ハブを購入することにした。いろいろ要求はあるが、以下の3つに着目した。
  • 長期信頼性があること
    可動部がないこの手の装置(冷却ファンがあるものは家庭内では24時間駆動させられないので除外)の長期信頼性は、回路基板上の部品の信頼性でほぼ決まる。特に問題なのは、電解コンデンサだ。一時期、東南アジア製のメーカー不明の電解コンデンサが流通し、PCのマザーボードで大きな問題となったことを知っているので、「日本メーカ」(日本のメーカが海外で製造しているものでも良い)を選びたかった。
  • ノンブロッキングであること
    スイッチングハブでいうノンブロッキングとは、ポート1から8まであるうちの、例えば1−8間、2−7間、3−6間、4−5間で通信が行われているとすると、これらの4組全ての上り下りの通信で、フルスピード(今回は1Gbps)が出るということだ。つまり、1Gbps×4組×2(上り下り)で8Gbpsあればよい。
     当面はここまで必要ないが、ここが遅いと、いずれ動画データをガンガン流すようになった時、「(HDDで)ビデオを見ると、ネットが遅くなる」という苦情に繋がる。
  • 電源内蔵であること
    絶対というわけではないが、あの面倒なACアダプタを何とかなくしたものを使いたい。
ということで探していると、PLANEXの製品でぴったりのものがあった。FXG-08IMというもので、ホームページには「日本製電解コンデンサ使用」とある上、電源内蔵(もちろんファンレス)、スイッチングファブリックは16Gbpsだ。
(注記:現在この機種は生産中止で、後継機で同様のスペックの物が出ています。価格が下がった分、バッファメモリは減ってしまっていますが…)
 本来なら3台必要だが、とりあえず南北領域それぞれに1台ずつ要るので、愛三電機でケーブルやぐっとすと一緒に2台買ってみた(Fig.2-11)。
筐体は薄くて小さいFXG-08IM
Fig.2-11

筐体は薄くて小さいFXG-08IM

内部はシンプルかつ小型
Fig.2-12

内部はシンプルかつ小型

 箱がやたら薄っぺらいので、どんなものが入っているのか、と思って開けてみてビックリ、非常に小型だ。幅方向はコネクタを並べなければならないのでさほど小さくならないが、その奥行と厚さには驚いた。
 こうなってくると技術屋の血が騒ぐ。「中はどうなってんだろ…」ということで、開けてみた(Fig.2-12)。カタログに偽りはなく、日本メーカ製の電解コンデンサが並んでいた。ひときわ目を引くのが、(多分)EMI対策用の銅テープの張られた2つのチップだ。多分、それぞれが物理層チップとコントローラだろう。電源部が小さいのも驚きだ。
 それにしても面実装基板で、電解コンデンサが挿入部品というのも最近では珍しい。RoHS指令対応ということだから、面実装タイプの鉛フリーハンダのハンダ付け温度の問題かもしれない。

工法(我流につき注意)

 ここでは、家庭内LAN配線について、必要な工法を説明している。但し、(製品に説明があるものを除き)誰にも聞かずに、私自身が勝手に編み出した工法なので、適切かつ最良ではないものもあると思う。プロの方から見れば「こんなやり方、邪道だ!」とお叱りを受けるものもあるかもしれない。
 ご自分で同様の作業を行なう際は、呼び線がどこかに引っ掛かって戻ってこなくなったり、石膏ボードが割れたりといったリスクが伴うこともあるので、自己責任でお願いします。


□ 3-1 通線ワイヤの使い方

 通線ワイヤはCD管など管内に通線する際の、最も基本の工具だ。光ファイバの工事で見かけて以来、いつか使ってみたいと思っていた。ただ、きちんと専門の教育を受けたわけではないので、全くの我流だが。
 手順としては、ワイヤを入線と反対側から通線する→ケーブルを取り付ける→出線側からワイヤを引っ張る→通線したらケーブルを取り外す となる。

ワイヤヘッドを外して挿入する
Fig.3-1

ワイヤヘッドを外して挿入する
 通線ワイヤには、ヘッドと呼ばれるケーブルを引っ掛ける部分が先端に付いている。今回使ったものはFig.3-1のように「秒速結線」(商品名)というヘッドが付いている。ワイヤを入線と反対側から通す際には、このヘッドがあると曲がり部分で引っかかったりするので、私の経験から言えば外しておいた方が通りやすい。
 通常、全く管の中に先行配線がない、というケースは少なく、すでに何らかのケーブルが引かれていることが多いから、そういう場合は追加通線用のヘッドも付いていることがある。今回購入したワイヤには、テール側(ヘッドと逆側)にそれ用のヘッドが付いている。
 ワイヤをうまく通す「コツ」は、引っかかったら無理に押し込まないないことだ。一旦引いてみたり、振ってみたりして、ワイヤが前回とは異なる経路を通るように刺激してみることだ。無理に押すと、折れ癖がついて使い物にならなくなることがある。

貫通後にワイヤヘッドを付ける
Fig.3-2

貫通後にワイヤヘッドを付ける
 めでたく通線ワイヤが入線側に出てきたら、ワイヤヘッドを取り付ける。ヘッドはねじ込むようになっているが、ワイヤ側のネジとヘッド側のネジはスパナやモンキーレンチを使って、手で回した程度では容易に回らないようにする。
 ケーブルのくせなどでこの部分に回転力が加わった場合、締めがゆるいと回って外れてしまう。そうなったら最悪だ。ケーブルを引き抜いて、またワイヤの通線からやり直さなければならない。
 急いでいる時は面倒だが、省略できない作業である。

「秒速結線」の使い方
Fig.3-3

「秒速結線」の使い方
 次に行なうのは、ケーブルをヘッドに取り付けることだ。ここでは、この通線ワイヤに付いていた「秒速結線」を元に説明するが、他の工具でも基本は同じだと思う。
 まず、この作業を行なう前に、ケーブルの「より(ねじれ)」を十分に取っておくことが必要だ。巻いて売られていたケーブルには、ねじれ癖がついているので、これが通線の際に間の中で「キンク(ねじれが輪になったもの)」となる。なかなか通らないから、と、強い力で引くと芯線が切れることがあるからだ。もちろん切れるまでに至らなくとも、インピーダンスがそこだけ変化して、反射が多くなり、エラー頻発、ということにもなりかねない。
 「より」が十分取れたら先端のリングを広げておいてケーブルを通し、リングを締める。リングの挿入するケーブルの長さは、5〜10cm程度が適当だろう。あまり長くなり過ぎると、ヘッドの太くなっている部分とケーブルが重なる部分が出てくる。こうなると、その分、管に余裕がなくなって通りにくくなるわけだから、先端の細いワイヤ部分と同程度の長さでとどめておくのがよいだろう。
 逆にあまり短くすると、(次に書く)テープの巻きしろが短くなってしまうので、引っ張った時に抜けてしまう可能性があるからだ。

抜けないようにテーピングする
Fig.3-4

抜けないようにテーピングする
 次の作業は、ケーブルを通線ワイヤにテープで固定することだ。
 ここで使うテープは、電気絶縁用のビニルテープでよい。テープはケーブル側から、必要かつ十分な重なりを持って、ケーブルとヘッドのワイヤがぴったりくっつくように巻いてゆく。ゴテゴテに巻いてしまうと、その部分が太くなって、通りにくくなるからだ。うまく巻くには、テープが伸びない程度に張力をかけながら巻くことだ。
 滑りがよくなるように、なるべく凹凸がないように均一に巻くのがコツである。テープの巻き方程度のことで、通線できないのは腹の立つことだから、ここでのトラブルは避けたい。

出線側から引っ張って通線
Fig.3-5

出線側から引っ張って通線
 いよいよ、通線ワイヤを出線側から引っ張る。単にぐいぐい引っ張ればいいというものではなく、途中で引っ掛かった感じがしたら、無理に引かず、一旦入線側に廻ってケーブルを引き戻してみて、また通線ワイヤの方を引く、といったことも必要だ。
 2人でやる時は、声を掛け合いながらやれば簡単だが、一人だとなかなか行ったり来たりと面倒だ。
 それから、引っ掛かった時や重くなった時は、その手応えから、管内がどうなっているのかを想像してみることが大切だ。強めに引けばズルズルと動くなら、単に狭くなっているだけだろうし、引いてもびくとも動かない時は、管が折れていたりケーブルがキンクを起こしたりしていて、引っ掛かっている、と想像できる。
 ケーブルが出てきたら、ぐっとすの接続作業が可能な程度(50〜60cm程あれば十分)の余長を確保するまで引き出す。ケーブルの接続をミスして、ぐっとすの接続をやり直す時に備えて、長めに出しておくのがよい。私も素人だから、ついつい心配性で長く出してしまう。余った分は、壁内に押し込んで置けばよいが、ケーブルが折れないように注意する。
 何度かの経験を要するのが何であるかは、はじめてやるとなかなか分からないものだ。無理やり引っ張って光ファイバを切ってしまうような失敗もする(ソレハ私ダ)が、何度かやるうちに勘所がつかめてくる。このあたりはなかなか文章にしづらいところだ。

テープを外してできあがり
Fig.3-6

テープを外してできあがり
 十分な余長が取れたら、絶縁テープを外して、ケーブルをヘッドから外せば通線は完了だ。
 なお、ここでは1本だけの通線を行なったが、2本3本と束ねて通線するのも同じ要領だ。ただし、通線ワイヤを引く時の牽引力は相当大きくなる。特に、管に余裕が少ない時は最初からつかえているのかと思うくらい重いから、注意を要する。また、重い通線ワイヤの牽引を素手で続けていると、人差し指と手のひらの間あたりの皮がむけるので、軍手をした方がよい。
 この後、必要なら、入線側のケーブルも同程度の余長を残して切断する。

 管の中の通線は、通線作業の基本だ。最近は一戸建てで先行配管として、CD管が新築時に引かれている家もある。そういった住宅は基本的にこの通線作業がほとんどのウエイトを占めるだろうから、簡単な個所からやってみて、慣れてしまえば自分で工事ができる。
 ただ、一人作業ではなかなか防げない、ケーブルのキンクにだけは十分御注意いただきたい。
□ 3-2 パネルボックスの設置方法

 パネルボックスは、石膏ボードに後から取り付けるコンセントボックスのことだ。今回使うのは未来工業製だが、JIS規格で作られているので、松下電工のコスモワイドシリーズも取り付けられる。
 この作業は、壁に大きな穴をあけるので、場所を慎重に選ばなければならない。もし、失敗したら(パネルボックスが取り付けられなかったら)、穴をあけた壁は元に戻らないのだから。また、カテゴリ6ということで、ケーブルのコシの硬さもあり、奥行方向の寸法には注意が必要だ。

 パネルボックスを設置するにあたり、事前に十分調べておかなくてはならないことがある。それは、壁面(壁紙の貼ってある面)からコンクリート壁、あるいは隣室の石膏ボードの裏側までの距離である。
ぐっとすに必要な奥行きの測定
Fig.3-7

ぐっとすに必要な奥行き

 何故そんなものを測定しなければならないかというと、パネルボックスの深さと、ケーブルの曲げの関係で、奥行方向に一定の距離を取らなくてはならないためだ。
 パネルボックスは、未来工業のカタログに依れば、深さ方向の空間は石膏ボードの厚さも含めて最低でも37mmあればよい、ということになっている。
 今回は松下電工のぐっとす6を使用することに決めたが、ぐっとす6本体だけで30mmの奥行がある。これにケーブルを接続すると、ケーブルを急に折り曲げないためには、余裕を持つと50mm程度、ぎりぎりでも40mm程度の奥行が必要なのだ。
 つまり、この程度の奥行方向の余裕が、壁内にあるか、を調べておく必要がある。
 さらに、パネルボックスの内法深さは34mm程しかないので、そのままぐっとす6を取り付けてしまったのでは、ケーブルが折れてしまう(Fig.3-8左)。
 そこは便利品を供給している未来工業のこと、ボックスの底面が、ニッパなどでカットアウトできる(切り取って穴をあけられる)ようになっている。こう(Fig.3-8右)すれば、壁の中に奥行さえ取れていれば、ケーブルは折れなくてすむのだ。
 パネルボックスなどのものは、AC100V系の屋内配線器具に合わせて作られている物が多いから、ネットワーク用の部品では不都合が起こることもある。他社のは分からないが、このように回避策が取れるようになっていることを確認することだ。
パネルボックス深さと壁までの距離
Fig.3-8

パネルボックス深さと壁までの距離

 それでは、実際に壁の奥行方向のスペースを測ってみよう。やり方は、壁内の状況に応じて2種類ある。
中空壁の奥行き測定
Fig.3-9

中空壁の奥行き測定

外壁(コンクリ壁)の奥行き測定
Fig.3-10

外壁(コンクリ壁)の奥行き測定

 まず、隣室との壁で、両者とも石膏ボード等の場合だ。LANモジュラーを設置したい場所の近くのコンセントを選んで開けてみる。すると、大概はFig.3-9のように、向こうの部屋の壁(石膏ボード)の裏面が見えるから、そこにスケールを押し当てて、手前の部屋の壁紙の面までの距離を測ればよい。
 次は、向こう側がコンクリート壁の場合や、近くに開けられるコンセントがない場合だ。この場合は、まず「下地探しどこ太」を刺して穴をあける。どこ太では35mm程度の深さまでしか測れないから、工夫が必要だ。
 実は、どこ太の針は単体で6〜70mm程度の長さがある。針単体を取り出し(新品にはスペアが2本付いているのでスペアでもよい)、上で穴をあけた場所に針を刺す。突き当たるまで刺して、入り込んだ深さを測れば、壁までの奥行が分かる。

 このようにして、奥行方向に最低でも40mm、できれば50mm程度の寸法が取れるかどうかを確認する。重要なのは、LANモジュラーを設置する(あるいはその至近距離の)位置で測定することだ。コンクリート壁は、石膏ボードと完全に平行ではないので、場所によって奥行が異なってくる可能性があるからだ。これだけの奥行が取れなければ、ケーブルが折れてしまうのだから、設置はできないので諦める。

 なお、この必要な奥行寸法は愛三電機製のカテゴリ6のUTPケーブルと、ぐっとす6の組み合わせのものであって、これ以外の組み合わせでは、ご自分で必要な奥行を求められたい。

 奥行寸法がOKとなれば、いよいよ壁に穴を開ける。が、ここで早まってはいけない。まだまだ障害があるかもしれないのだ。
 その障害とは、次編の「北西柱への通線工事」でも紹介している、石膏ボードとコンクリート壁の間にある「セメントの塊」だ。こんなものがあったら、パネルボックスがつかないのは言うまでもない。
 このチェックは、やはり「どこ太」で行なうしかない。ボックスを設置する大体の場所を決めたら、その周囲を含めてどこ太を刺してみて、障害物がないかどうか調べてみる。あったら場所をずらすなどしなければならない。

穴のサイズをけがき(現物合わせ)
Fig.3-11

穴のサイズをけがき(現物合わせ)
 場所が決まったら、いよいよ穴開けに移ろう。開けた穴は取り返しがつかないので、慎重に作業する。
 まず、パネルボックスの取り付け位置に、ケガキ線(マジック)を入れる。この時、注意すべきなのは、近くにあるコンセントと高さを合わせること、水平をきっちり出すことだ、と、一言で書いてしまうと簡単なのだが、これが案外難しい。そもそも、元々付いていたコンセントとは、(同じパネルボックスでない限り)穴の形状が違う。
 こんな時は、まずパネルボックスにコスモワイドシリーズの絶縁取付枠とスイッチプレートを仮に付けてみる。そして、コンセントと取付け高さが合うように、パネルボックスを動かしてケガキ線を入れる。
 両者を斜めから見ないで、真正面から見ながら高さと水平を合わせるのがコツだ。正確に水平を出したいなら、水準器を用いると確実だが、穴の大きさの調整で数mm程度は融通が利くので、極端に神経質になる必要はない。

ファイルソーで四隅を穴あけ
Fig.3-12

ファイルソーで四隅を穴あけ

 次は、ファイルソーを使って四隅に穴を開ける。
 ケガキ線の内側に、開けた穴の外側が納まるようにする。通常の石膏ボードなら、柔らかいので、あまり力を入れなくても10回も回せば貫通してしまう。
 貫通したら、少し刃を奥に入れて、ヤスリ部を使ってケガキ線のコーナーの内側に、L形になるように穴を拡げる。これは、この後に使用する、廻し挽き鋸の刃が容易に入るようにするためだ。なので、刃が入る程度の大きさに拡げるだけで、何cmにも渡って広げる必要はない。Fig.3-12の右上の穴程度で十分だ。

廻し挽き鋸で四隅を結ぶ
Fig.3-13

廻し挽き鋸で四隅を結ぶ

切り取ったボードを取去り開通
Fig.3-14

切り取ったボードを取去り開通

 次は、四隅に開けた穴を、廻し挽き鋸で結ぶ(Fig.3-13)。この作業も、石膏ボードが柔らかいため、数分で終了する。この後、パネルボックスに合わせて、開けた穴をヤスリがけするため、なるべくケガキ線ぎりぎりを進むようにすると、後の作業が楽になる。
 切り取りの最後の瞬間は、あまり激しく鋸を動かさないで、Fig.3-14のように切り抜いたボードが手前に出てくるようにコントロールする。もし、勢い余って壁内にこの大きな「破片」が落ち込んでしまうと、ピッカーで拾い上げようにも爪が引っ掛かるかどうかは運任せだ。取り出せないと、最短経路が塞がれてしまい、最悪の場合通線ができなくなるかもしれない。私もヒヤリとしたことが何度かある。

ファイルソーのヤスリ部分で寸法調整
Fig.3-15

ファイルソーのヤスリ部分で寸法調整

水平が出ているか確認して固定
Fig.3-16

水平が出ているか確認して固定

 穴が開いたら、四辺をファイルソーのヤスリ部分で削りながら、その都度パネルボックスをあてがって、入るまで削って寸法を合わせる。最初にケガキ線を入れたところまで削るが、面倒だからと一気に削ってしまうとガバガバになるので慎重にやる。
 ボックスが入ったら、高さと水平を確認する。分かりにくければ、仮に絶縁取り付け枠とコンセントプレートを取り付け、周囲のコンセントと見比べて見ればよい。
 もし、斜めになっていたら、その傾きの方向に合わせて、穴の下辺または上辺の左右どちらかだけを微妙に削る。高さが低い場合は穴の上辺を均一に、高さが高い場合は穴の下辺を均一に削る。このあたりは微妙な調整になるので、削り過ぎないように注意するが、もし削り過ぎたら、パネルボックスを固定する際に、調整しながらネジを締めれば何とかなる。

 以下に書くことは、トラブル対応だが、すべての場合に当てはまるわけではないと思うので注意していただきたいが…穴があいて、不幸にもセメントの塊が現れてしまったら、(本編でも書いているが)まずそのセメントの硬さを調べる。目安は、ファイルソーの先端で削り取れるかどうかだ。それから、構造材(コンクリートの外壁または柱)に直接付いておらず、断熱材の上に「乗っている」状態なら、取り除ける可能性が大だ。
 もしファイルソーで削れて、かつ、断熱材の上にあるようなら、慎重に硬い金属棒(太目の釘)などで割ってゆくと取れる。但し、このセメントの塊を取り除くことは、すなわち壁の支えを一部無くしてしまうことを意味する。壁の構造を理解した上で、ご自身の責任でお願いしたい。
 また、セメントの塊を手前に引くと石膏ボードが割れるので、力をかける時は、必ず奥の方向にかける。断熱材の上にあるから、と、釘などを差し込んでてこの原理で手前に浮かそうとすると、まず割れてしまう。
□ 3-3 ぐっとす6の工法

 ぐっとす6とは、松下電工の(カテゴリ6)情報配線システムの総称だ。いろいろな機材があるが、ここでは埋込みモジュラーコンセントの施工法を我流ながらご紹介したい。

ケーブルの被覆剥きと材料の準備
Fig.3-17

ケーブルの被覆剥きと材料の準備
 まず、ケーブルの外皮をカッター等で50mm程度剥く。最近は、専用のカッターなどもあり、作業が安全・簡単になったが、普通のカッターでやる時は芯線に傷を付けないよう、十分注意する。コツは、あまり力を入れずに、ケーブルを回しながら、最初は表面だけに「切れ目」を入れるだけにする。外皮の厚さ全部に渡って刃を入れてしまうと、まず芯線の被覆が切れてしまう。被覆にうっすらスジが付いている程度ならまず大丈夫だ。
 外皮が取り除けたら、次は十字介在(クロスセパレータ)をニッパ等で、根元から切り取る。うまく根元から切るには、4本あるペアを十分外向きに曲げておき、ニッパの刃の先をうまく使う。この時、芯線を誤って切らないように注意する。十字介在は2mm程度はどうしても残ってしまうが、問題ない。
 ここで忘れてはならないのは、パネルボックスなど、モジュラージャックを取り付けてしまってからでは穴を通せないものは、この段階までに通しておくことだ。これを忘れると、「お、きれいに仕上がったな」と思った次の瞬間、泣きを見ることになる(経験者は語る)。

芯線を色表示に合わせて配置
Fig.3-18

芯線を色表示に合わせて配置
 ケーブルの準備ができたら、モジュラーの青いキャップ(ケーブル押さえ)を外し、ケーブル挿入側から見て、左半分に橙色のペアと緑のペアが、右半分に青と茶色のペアがくるようにする。
 左半分は、A結線とB結線で手前側(ケーブル挿入側)と奥側(パネル側)の色が入れ替わるが、とりあえずここでは左半分に曲げておく。
 A結線か、B結線か、自作ケーブルでも問題になる話だが、通常、ストレートならどちらかに統一しておけば、全部Aでも全部Bでもかまわない。どこかの掲示板で、「業界標準は両方B結線」とかいう書き込みを見たような気がするが、機能的には両方Aでも何の問題もない。
 むしろ肝心なのは、後日の改修工事等の時、AだったかBだったか忘れないようにすることだ。このぐっとす6のモジュラーが使いやすい点のひとつは、例え接続を忘れても、本体に表示があるので、分かるところだ。

芯線をV溝に入れる
Fig.3-19

芯線をV溝に入れる
 芯線の大体の分配ができたら、いよいよ芯線を差込位置のV状の溝まで持ってゆく。ここで入れる位置を間違えてはいけない。
 極力撚りを戻さずに入れるには、以下のようにする。まず、該当のペアを色に合わせて位置の上まで持って行く。ペアをぐっとす6の「山」状の分離帯に押し付けて、撚りを押し広げてながら、溝にはめ込んでゆく。方向に無理があるなら半回転程度よじって入れてみる。なるべく、ほどく方向に回転させない方がよい。撚りがきつすぎて入らない場合は仕方がないので、少し戻す。
 位置が決まったら、爪の先などで、線を少し溝に差し込んでおく。

クリック感があるまで差し込む
Fig.3-20

クリック感があるまで差し込む
 8本すべての線について位置を決めたら、今一度、線の配置に間違いがないことを確認して接続に入る。
 最初に外したキャップのU字の溝を下向きに持つ。そして、線の上から押し付けるように、キャップを下げてゆく。すると、一旦手応えが出てくるが、さらに押し込んでゆくと、「カチ」っというクリック感がある。このクリックがあるまでは押し下げるのを止めてはいけない。
 逆にいうと、クリック感があれば、ほぼ間違えなく接続されたものと考えてよい。キャップの入る方向などのばらつきにより、たまにクリック感なく入ってしまうこともあるが、そういう時は、横から見て、溝の底部まで差し込まれていることを確認する。

余分な線をニッパでカット
Fig.3-21

余分な線をニッパでカット
 ここまでくれば、電線と本体の電極は直流的には接続されているはずである。
 次には余分な線をニッパで切り落とす。ニッパの刃の「背」を本体側に当て、余分な線が極力短くなるようにする。ぐっとすには上で行なったキャップでのはめ込みと電線の切断を一気にやってしまう、便利な工具があるらしいが、その工具でやるとギリギリまで切り落とせるらしい。
 なぜ、短く切り落とすかというと、余った部分が高周波回路で言う「スタブ」になるためである。1000BASE-Tでは、1ペアあたりの伝送速度は250Mbpsだが、信号の周波数成分としてはもっと高域の成分までを含む。
 GHzオーダーの信号では、数mm単位の余分も反射を生じて波形を乱すので、ここは几帳面に施工したいところだ。

切り揃えが済んだ様子
Fig.3-22

切り揃えが済んだ様子
 全部きれいに切り揃えると、Fig.3-22のようになる。改めて写真で見てみると、茶色と橙色がちょっと撚りがほぐれ気味だ。気になるならやり直しもできないこともないが、メーカーとしては再利用はお勧めではない(のが公式?見解)ようなので、やめておく。次回やる時はもっとギリギリまで撚っておこう。この程度なら、直ちに通信できなくなるわけではない。
 さて、カバーをはめる前に、今一度、配線に間違いがないか、確認する。もしケーブルテスターをお持ちなら、この段階でテストするのがいいと思う。ミスがあっても、コンセントを開けずに直せるからだ。

カバーをかぶせて完成
Fig.3-23

カバーをかぶせて完成
 最後に、カバーをかぶせて完成!なのだが、ここでもし、カバーがきちんと(カバーもはまる時には「カチッ」というクリック感がある)はまらない時は、ケーブルがきちんと所定の位置におさまっていない可能性があるので、はまり具合をチェックする。
 また、パネルボックスの設置方法の所で述べたように、ケーブルがぐっとす6を出た所で急に曲げられるような施工をすると、はめ込んだはずのケーブル押さえからケーブルが浮いてきて、直接芯線に張力がかかるようになるため、断線(または外れる)の可能性が高くなる。くれぐれも、出てすぐのところで、急に曲げないように注意する。
 なお、この青いカバーは、ケーブルを押さえつける構造にはなっていない。

□ 3-4 簡易な石膏ボードの養生

 これは、パネルボックス用に開けた穴から、通線ワイヤやジョイント呼び線を使って通線する際に気が付いたことだ。
通線ワイヤで穴の奥側が削れる
Fig.3-24

通線ワイヤで穴の奥側が削れる

ボール紙で作った簡易カバー
Fig.3-25

ボール紙で作った簡易カバー

 まず、Fig.3-24を見ていただきたい。穴の奥側が削れているのがわかる。もちろん、ファイルソーで開けたばかりの時は、こんなに削れておらず、切り口はどこも壁と垂直になっていた。
 ところが、通線のために、何度もワイヤや呼び線を出し入れするので、そのたびに軟らかい石膏ボードが削られて、このようになってしまったものだ。簡単に通線する所はいいが、「難所」はこすられる回数も半端ではないから、何かしら養生しないと、パネルボックスが取り付けられなくなるばかりか、取り付けた時にボードが割れてしまう危険性も出てくる。
 何とかしなくてはならないが、あまり費用がかかるようなこともしたくない。
 そこで思いついたのが、Fig.3-25のような、ボール紙で作った簡易なカバーだ。これならどこにでも転がっている材料で、ほとんどタダで作れて、そこそこ効果がある。
削られやすい場所をカバー
Fig.3-26

削られやすい場所をカバー
 作り方は簡単で、ボール紙を穴の幅に合わせて切って、コの字型に折り曲げるだけだ。この時、すぐに外れないようにするために、「裾」を長めに取っておくのがミソだ。また、横幅はなるべくぴったりに作る方がよい。狭いと、ガタがあって左右に動いて具合が悪い。
 このカバーを、Fig.3-26のように、通線ワイヤや呼び線があたる所にはめ込んで、あてがっておく。写真では使用していないが、このままではブラブラしていて、呼び線を引いた時にいっしょに上がってきて外れてしまうこともあるので、下側をテープで仮止めしておくといい。
 なお、写真のジョイント呼び線を引き出した時には、上の手前側にも呼び線が当たるので、上下で同じように養生すれば完璧だ。
 難点は、繰り返し使っていると擦り減ってくることだが、そうしたらまた作り直せばよい。100円ショップで売られている適当なプラスチック材を買ってきて、折り曲げて作れば、半永久的だ。

□ 3-5 カテゴリ6用RJ-45プラグ取付

 LANケーブルの自作方法は、さまざまな所で紹介されているが、ここではカテゴリ6に特有のポイントに着目しながら、説明することにする。

工具と材料の準備-589
Fig.3-27

工具と材料の準備
 まずは工具と材料を準備する。今回、準備したのは三和サプライのかしめ工具HT-500RとコネクタADT-6RJ-10だが、これに限るものではない。選定のポイントは、工具とコネクタがきちんと合っていることだ。一般に、コネクタ側で「推奨工具」と決められているものを使えば組み合わせに問題は起きない。
 かしめによる圧着は微妙な寸法精度が信頼性に影響するので、工具メーカーの推奨でないコネクタを使いたい場合は、専門店で聞いてからにするなど、慎重にした方が良い。
 なお、ここに挙げた工具以外に、ニッパやカッター(皮むき器がない場合)が必要だ。また、ブーツを付けたい場合はそれも準備する。

外被の除去
Fig.3-28

外被の除去
 後付けでないブーツを付ける場合は、ここで通しておく。
 ケーブルの先端から5〜6cmのところで外被に切れ目を入れ、除去する。皮むき器を使う場合は、1回転以上させないように注意する。グルグル回すと、芯線まで傷がついてしまう。カッターで切れ目を入れる時は、力を加減して、芯線の外皮まで刃が達しないように注意する。
コツは、外皮の表面に傷を入れる程度にして、引きちぎる感じだ。こうすれば芯線まで刃が到達しないので安全だ。

芯線の取り出し
Fig.3-29

芯線の取り出し
 1周分、切れ目が入ったら、そこから引っ張って外皮を除去する。上にも書いたように、外皮の材質によっては表面に浅く傷を入れただけで、傷の部分が上になるようにU字型に曲げると、パリっという感じで容易に引きちぎれるようになる。今回使用した愛三のケーブルはそうだった。
 芯線が出てきたら、後で書くような十字介在の切断のため、外皮の部分から芯線を四方に広げるように曲げる。

十字介在の切断
Fig.3-30

十字介在の切断
 十字介在はなるべく根元から切断する。Fig.3-30のように、芯線がなるべく邪魔にならないようにケーブルの根元の方に曲げ、十字介在だけが飛び出すように手で押さえたら、ニッパの刃をなるべく根元まで押し当てて切る。
 あまりがんばってギリギリまで切ろうとすると、芯線を切ったり傷付けたりするので、注意する。1〜2mm残ったところで接続には問題ないので、極端に神経質にならなくてもよい。

芯線の撚りほぐし
Fig.3-31

芯線の撚りほぐし
 芯線だけが出るようになったら、1対ずつ撚りをほどいてゆく。ここで十分注意しなくてはならないのは、調子に乗って撚りが外皮の中までほぐれてしまわないようにすることだ。カテゴリ6の高速性は、この芯線の「撚り」によって支えられている。たかが1cmと油断すると、途端に速度が落ちる(らしい)。
 これを防ぐには、外皮の数mm手前で、ほぐすのを止めておくようにすれば安心だが、後で入れるロードバーまでの距離が遠くなってしまうと本末転倒なので、両者のトレードオフに注意してほぐして行く。

芯線の延ばし
Fig.3-32

芯線の延ばし
 このコネクタはロードバーを用いる方式なので、芯線がほぐれても捻じれたままではロードバーが入らない。そこで、指でしごくようにして芯線を8本全部、できるだけまっすぐになるようにして行く。ここでのポイントは、この時点で芯線の並び順を確認しておき、その順に近いように並べながら伸ばしてしまうことだ。
 それにしてもカテゴリ6の芯線の銅線(単線)は0.5mmと結構太い(愛三のもの)ので、ケーブルを何本もやっていると、指先が痛くなる作業だ。

芯線の並び順
Fig.3-33

芯線の並び順
 ここで、芯線の並び方を確認しておく。
 上は、TIA/EIA568A接続(以下、単にA接続という)、下がTIA/EIA568B(同じく、B接続)だ。ストレートケーブルを作りたい場合は、両端をA又はBで統一する。一般的には両方をB接続するらしいが、自分で間違えないようにしておけばどちらも特性は同じだ。片側がぐっとす6であっても事情は同じである。
 Fig.3-33は、上下2段になっているロードバーを前提にしている。カテゴリ6の場合、芯線の位置決めの精度を出すために、ロードバーが採用されていることが多いが、このように上下2段になっていると、芯線を挿入しやすい。

芯線を上下に分ける
Fig.3-34

芯線を上下に分ける
 まず、芯線8本のうち、上段に入れる6本と下段に入れる2本を分けるように手で持つ。次に、上段の芯線をFig.3-33の順に並べる。この時、注意しなければいけないのは、順番に並べるために並べ替える時、撚りをほぐす方向に回さないことだ。すでに外被の来ているぎりぎりまでほぐしてあるはずだから、逆に撚る方向に回さないといけない。
 新たに撚った部分が、なるべく外被から出てくる至近距離で納まるようにする。
 下段の2本も同様の要領で並べておく。
 並び順が変わってしまわないように、全体をしっかり押さえて持つこと。

上段芯線カット
Fig.3-35

上段芯線カット
 最初に上段の6本の芯線をニッパで一気にカットする。まっすぐにカットすると、ロードバーの穴に入れる時に非常にやりづらいので、Fig.3-35のように斜めにカットする。並び順を間違えたままこのカットをやってしまうと、やり直しなので、今一度順序をチェックする。
 斜めにする角度だが、あまり角度をつけると、ニッパの刃渡りが届かなくなるので、Fig.3-35の程度でかまわない。あまり大きな角度をつけても、入れ易さに大差はない。
 逆にゆるすぎると効果が薄くなる。このあたりは、やってみてコツを掴むしかない。

下段芯線カット
Fig.3-36

下段芯線カット
 上段の芯線を斜めにカットしたら、同様に下段の芯線もカットする。上段と同じ長さにすると、これまた同じ理屈で、ロードバーに入れづらくなるので、2〜3cm上段より短く切る。
 こうすると、上段の芯線がすべてロードバーに納まってから、下段を入れられるようになる。要するに、近寄った多数の穴に物を通す時、高さが揃っていると、全部が一斉に穴に入らなければならないが、高さに差がついていると、順に入れて行けば良いから楽なのである。

ロードバーへの挿入
Fig.3-37

ロードバーへの挿入1
 先に、上段の芯線を長い順にロードバーに入れて行く。
 芯線を入れる穴の内径は、芯線の外径ぎりぎりに出来ている。つまり、芯線側に急な曲がりがあるとつかえてしまうのだ。このため、最初に手が痛くなっても、芯線をまっすぐにしておく必要があったのだ。
 もしここで、よじれが十分取れていなくて、ロードバーが進まなくなってしまったら、短気を起こさずに一旦ロードバーを抜き、曲がっている線をまっすぐにしてからやり直すことをお薦めする。
 無理にやって「くの字」に曲がってしまったら、1からやり直しになってしまう。

ロードバーへの挿入2
Fig.3-38

ロードバーへの挿入2
 次は下段の挿入だ。
 ゆっくりロードバーを下ろしながら、緑/緑白のペア(B配線の場合)を挿入して行く。
 下段も、注意すべきことは上段と全く同じだ。引っ掛かっても短気を起こさずにやる。

ロードバーの位置決め
Fig.3-39

ロードバーの位置決め
 ロードバーを、なるべく外被の近くまで持ってゆく。この途中でも、線が曲がっていて通らなくなったら、一旦抜いてやり直した方がいい。
 カテゴリ6の広帯域(=高速)特性は、芯線の「撚り」に依存している。たかが1cmほぐれているだけ、とナメてかかると、途端に速度が落ちる(らしい)。
 なぜ、ロードバーを芯線が出ている近くに持って行くかというと、この「撚られていない部分」を最短距離にするためだ。短ければ短いほど良い。カテゴリ6がエンハンスドカテゴリ5と比較して、厳しい工作を要求される理由はここにある。

芯線の切断
Fig.3-40

芯線の切断
 十分ロードバーが近くに入ったら、ニッパで全部の芯線を切断する。
 この時、ロードバーの先端面から芯線が首を出さないように、刃先を極力ロードバーの先端面に当てて切るようにする。
 いちいち能書き書くな、と言われそうだが、ここが飛び出していると、ハウジングの中に入れた時にロードバーの位置が本来の位置とズレてくる。通信不良の原因となりかねないからだ。
 だが、刃の大きなニッパでは、どうしても芯線とロードバーの端面がツライチにならない。その対処法はこの次に書く。

先端の切り揃え
Fig.3-41

先端の切り揃え
 芯線を切ってから、ロードバーを押し込んでみたらまだ入った、とか、ロードバーの端面と芯線の切断面がツライチにならない、ということが生じることがある。
 このような時は、ロードバーの先から、少しだけ芯線が顔を出しような感じになっている。こういった短い出っ張りを切り落とすには、Fig.3-41のような、先細ニッパがあると便利だ。
 これで先程の大きなニッパと同じように、両者がツライチになるように刃を当てて、パチン、パチンと切って行くと、先端がほぼ平坦になる。

先端の平坦さ確認
Fig.3-42

先端の平坦さ確認
 芯線を切りそろえたら、先端面の平坦さを確認する。ニッパや先細ニッパで切れる程度の長さで揃っていれば、極端に神経質になる必要はないが、一応確認はしておこう。
 芯線とロードバーはお互いに固定されているわけではないので、不用意に手や物が触れた拍子に抜けてしまわないよう、注意する。
 ちなみに、Fig.3-42では、外被からロードバーまでの距離がまだまだ長い。本当はもっと詰めて5mm程度にしたいところだが、やり始めでまだ下手で、こんな長さになっている。

ケーブルの差込み
Fig.3-43

ケーブルの差込み
 ロードバーが付いたら、ケーブルをプラグ本体に差し込む。この時、注意するのは以下の2点だ。
 まず、ロードバーがプラグの中を突き当りまで入って行っているか、ということ。この後、かしめる際に、ピンと一体になった「刃」が降りてくるのだが、その位置が外れて接触不良になってしまう。
 次は、ケーブル押さえの下まで、ケーブルの外被の部分が入ってきているか、だ。ここ(ケーブル押さえ)に十分外被がないと、芯線だけを押さえることになってしまい、プラグがすぐ取れてしまう。

圧着工具によるかしめ
Fig.3-44

圧着工具によるかしめ
 いよいよかしめる作業に入る。ここならまだ引き返せるが、かしめてしまってからではプラグ本体もロードバーも再利用できないので、自信がない時は、工具にプラグを入れる前によくチェックしておこう。カテゴリ6のモジュラープラグは高価だ。
 工具にプラグを挿入する時は、モジュラージャックに差す時と同様、「カチッ」という音がするまで確実に差す。差したらゆっくりと工具を握ってかしめる。
 Fig.3-44の反対側から見ていると分かるが、工具を握ると、ピンと一体になった「刃」が芯線の外被を突き破って刺さり、芯線と接触する構造になっている。

仕上がりの確認
Fig.3-45

仕上がりの確認
 ラチェット付きの工具の場合、圧着が終わるとラチェットが外れて開く。そうしたらコネクタをジャックから抜く要領で取出し、目視でチェックを行なう。ポイントは以下の2点。
 まず、コンタクトの高さ方向に凹凸はないか。凹凸があるということは、圧着が均等に行なわれていない、ということに他ならない。
 次は、「刃(ブレード)」が芯線まで達しているか。プラグの端面からは、芯線と接触しているように見えるものもあれば、そう見えないものもある。接触していないように見えるものでも奥側で接触しているようなので、このチェックはよほどひどいことになっていないかを見るだけだ。

 ここまで来たら、ケーブルの機能としてのチェックを行なう。
 普通はケーブルテスタなどでチェックするが、導通とストレート/クロスの判別以外に1Gbpsがきちんと通るか、までテストできるチェッカーはかなり高価なので、ギガビットポートを持つPCとハブなどでテストしてみるのも良い。
 今回はノートPCとデスクトップPC(両者ともギガビットポート装備)の間にスイッチングハブ(FXG-08IM:PLANEX)を接続して、その接続にテストするケーブルを入れて、動作を確認した。

光ファイバ切断と南北通線
□ 4-1 光ファイバが切れた

 さて、いよいよ実際の工事に取り掛かることにする。まずは南北領域間相互の通線だ。住戸内の見取り図でいうと、ダイニングのモジュラーと洋室1を結ぶ経路で、すでに光ファイバと電話線が通っているが、CD管の太さとしてはまだ余裕がある。南北領域を結ぶ経路は今のところここしか見つかっていないため、カテゴリ6を2本引くことにした。だが、これがそもそもの間違いだったのだ。
通線ワイヤが洋室1まで通る
Fig.4-1

通線ワイヤが洋室1まで通る

 まず、ダイニング側から通線ワイヤを洋室1に向けて通した。ダイニング側の埋込みボックスでは、下流側(洋室1側)のCD管が、ボックスから下に向けて出ている。20cmほど行ったところで、床面のスラブにあたるため、急に曲がっているようで、ここで何度も引っかかり、なかなか通線ワイヤさえ通らなかった。また、洋室1側のボックスでも、10〜20cm手前で急な曲がりがあるようで、どちらから入れても、あとひとつのところで止まってしまうのだった。
 この時、あっさり止めていれば事故にはならなかったのだが、費用もかけ、練ってきた計画だ。少し通線ワイヤの通りが悪い程度で、そう簡単にやめる気にはなれなかった。何しろまだ始まったばかりである。
 そんな中、Fig.4-1は、どちらかといえば曲がりが緩い洋室1側を出口側にして、通線ワイヤが通った瞬間だ。2日がかりでここまできた。正直言ってこの時はホッとした。
 次に、通線ワイヤのヘッドに、2本のケーブルを引っ掛ける。やり方は簡単で、先に書いたように、先端が大きさ可変のリングになっているので、ここにケーブルを通し、リングを絞ってケーブルが簡単に抜けない程度にする。その上からビニールテープを巻いて、抜けないように固定するとともに凹凸がないようにすれば準備完了だ。
 一人作業なので、入線側に潤滑剤を塗ったら、引出し側に行って通線ワイヤを引っ張る。これを、ケーブルが顔を出すまで繰り返す。入線側(洋室1)の最初の曲がりを超えてしまうと、後はほとんどスイスイ通る。ところが、やはりケーブルが電話台の埋込みの20cm下あたりで引っかかって出て来ない。ナゼ、ケーブルはそこまで来ているのに!と泣きたくもなる。通線ワイヤのヘッド部分は出て来ているのだから。
 最初は力任せに引っ張っていたが、入線側から少し押してやると、割と楽に通ることが分かり、通ったところが、右のFig.4-2だ。
 ところが、ここで大きな誤りが発覚した。ケーブルの長さが足りないのだ。
ケーブル2本が南北領域に通線
Fig.4-2

ケーブル2本が南北領域に通線

 何ということか! 自分自身に対するイライラのボルテージが一気に上がる。配線間の位置はおよそ測ってあったし、浴室のハブまでの距離も足したはずだ。なのに現実は長さ不足…通線ワイヤで、長さを測っておくべきだったのだ。経験不足からくるミスか、単なるアホか? いずれにせよやり直しである。
 Fig.4-2は、その長さの足りないケーブルが通ったところだ。実際のファイバの折損事故は、この後に書く、2回目の通線で起こったが、すでにその兆候は現れていた。「ここが折れた」と書いてある部分が、埋込みボックスのシャープエッジにこすられていたのだ(あとで分かった)。写真でも曲がっている。
 長さが足りないケーブルは引き抜き、今度は十分な長さを測り直して、もう一度通線だ。2度目は、出口付近の引っかかりも、入線側から押せばいいことが分かっているので、イライラはしなかったが、この行為が切れかけのファイバにとどめを刺した。
 この時まで、光ファイバのことなど一度も気にかけなかったのが、「まさか切れてないだろうな」と、洋室1にあるONUをふと見ると、AUTHランプが消えているのだ。これで全てが終わった、と感じた。
 今思えばパニックになっていて、破断個所の写真も撮らず、NTTの故障修理に電話しても、自宅の電話番号を聞かれているのに、会社の電話番号が口をついて出る始末…もう本当に工事をやめようと思った。全てを元通りに戻して、ネタにするのもやめようと思った。だからこの時の写真がないのである。

 今となってはどうしようもないことなのだが、もし、これを読んでいる方が工事をしようとするなら、次のようにすることをお勧めする。
  • LANケーブルは光ファイバと同じ経路を通さない
    当たり前だが、絶対に安全な方法だ。もし、まだ光ファイバを引いていなくて、将来家庭内LANを引く可能性があるのなら、光ファイバの経路は容易にアクセスできないようなところにするのが良いと思う。完全に別の管の中に引いてしまうのも手だ。
  • 専門業者に工事を依頼する
    もし、経路の制約があって、どうしても同じ経路を引かなくてはならないのなら、この手もある。光ファイバを引き直した方が安いかもしれないが、ここだけは専門家の手を借りるのも一つの策だ。あまりにもリスクが高すぎるので、断られるかもしれないが。
  • 光ファイバを引いてから、手を入れない
    この方法は、まだ光ファイバを検討中の方にしか当てはまらないが、先に家庭内LANを工事(ケーブル通線)してしまい、後からファイバを通す。ファイバを通した後は絶対に手を入れない、ということだ。
 NTTのBフレッツの故障担当に電話した後、じっくり破断部を見てみると、ボックスがCD管を止めている部分の金属のエッジがむき出しで、そこに強い力で擦りつけられた樹脂外被が削られ、ファイバ芯線が抗張力線もろとも折れていた。壮絶な切れ方である。
 改めて書くが、光ファイバ「芯線」は弱いが、それをケーブルに加工したものは十分に強い。多少の張力や曲げにはびくともしない。だが、これは従来の銅線ケーブルに対して遜色ない、ということであって、銅線でさえ傷ついてしまうような扱い方(今回のように金属のシャープエッジにこすりつける)でも大丈夫、とは言っていない。つまり、今回は「光ファイバだから切れた」のではなく、「どんなケーブルでも切れるような扱いをしたから切れた」のだ。実際、光ファイバと同じ経路を引かれていた電話線も切れる可能性があった、ということだ。
 私のように無謀な方も珍しいだろうから、上のようなことは書くまでもないことかも知れないが、今回のように通線ワイヤがすんなり通らなかったり、ケーブル長をミスったりして、トラブルが続くと、冷静さを失って思わず力ずくで引っ張ったりしてしまう。それでもなお通信を止めないために、物理的にファイバには極力触れない状態で工事をしたい。
□ 4-2 光ファイバの修理工事

 光ファイバが切れたのが、とある土曜日だ。すぐに故障対応に電話したが、運良く翌週の月曜午前中に修理にきてくれることになった。この時、重ねて聞かれたのが「室内での破断か」ということだった。屋外の工事が必要だと、バケット車を出さなくてはならず、大掛かりになるからだろう。日曜日は丸一日、ネットがつながらない一日を過ごすことになった。
 さて、ダイニングのモジュラー位置でファイバが切れてしまった今、また洋室1までファイバを引いてくれ、というのはほぼ無理だと考えた。なぜなら、すでにカテゴリ6が2本と電話線が通っており、この上通線工具を通すのは無理だと思ったからだ。光ファイバを通すために、せっかく引けたカテゴリ6を引き抜いてしまう気にもなれない。
 しかたなく、ガス台横の壁に通信機器を吊り下げることにした。
 次の月曜日の朝一番で、NTTから工事の方が見えた。新設の時に来た協和エクシオさんなど、外部の業者ではなく、NTTの制服を着ていた。
 修理はいとも簡単で、モジュラーの根元で切れたのだが、そこでスプライスしてONUのファイバと繋いでしまう、というものだった。てっきり2階のIDFから引き直すのかと思っていた。それにしては担当者が一人しか来なかったのでおかしいなと思った。
追加された光ローゼット
Fig.4-3

追加された光ローゼット

 工事自体は30分ほどで終わってしまった。担当者は「こういうケース、初めてなんですよ」と言いながら、会社に料金の問合せをしている。出張料と技術料(部品代込み)で\12,000ほどだった。
 埋込みボックスの中で切れてしまったので、壁面に設けられた光ローゼットまでは届かない。配管の中にあった上流側の余長分を引っ張り出して、ギリギリ届いた格好だ。
 ちなみに、追加された光ローゼットの中身は、下の写真のようなものだ。単にメカニカルスプライス1本と余長が収納されているだけのものだ。
光ローゼットの中身
Fig.4-4

光ローゼットの中身

メカスプの周辺アップ
Fig.4-5

メカスプの周辺アップ

 ONUまでモールの中を引いてくれたのは良かったが、光ファイバの弾性が強すぎて、モールが剥がれてしまっているところがある。それにモールは真っ白なので、結構目立つ。出来栄えとしては、ちょっとなんだかイマイチな感じがした。
□ 4-3 南北相互領域の通線

 南北を結ぶ2本のカテゴリ6はいわばうちのバックボーンだ。とりあえずここだけはきちんとした配線にしておきたいので、端末処理は、下の写真のようにした。まず、ダイニング側だが、電話と光ファイバを引き出さなくてはならないため、埋込みモジュラーは2個設置できない。非常に見栄えが悪いが、ケーブルをそのまま引っ張り出して、壁設置用の露出ボックスを買ってきてこれにぐっとす6を取り付けた。このボックスを電話台の下のモノ入れの中に入れて隠してある。(モジュラーは6個付いているが、2個のみ使用している。残り4個はホコリ避けの蓋代わり。)
ダイニング側の接続(正面)
Fig.4-6

ダイニング側の接続(正面)

ダイニング側の接続(背面)
Fig.4-7

ダイニング側の接続(背面)

 いずれ、この家全体にネットワークを引き直す時には、当初の計画通りONUとルータ、ハブを洋室1に置き、そこから全ての部屋に分配するようにする。その時は光ファイバの引き直しだが、こんな大事故が起こってしまった以上、当面はおとなしくこのままにしておく。
 洋室1側は、光ファイバがなくなったのと、電話が1系統減ったので、2個のモジュラーが設置できることになり、下のようにきれいに収まっている。
洋室1の接続(内部)
Fig.4-8

洋室1の接続(内部)

洋室1の接続(正面)
Fig.4-9

洋室1の接続(正面)

□ 4-4 機器類の移設・配線変更

 ONUがダイニングに来てしまったのはいいが、困ったのはその置き場所だ。光ファイバが出ている位置から洋室1へは、ケーブルが2本しか出ていないので、2台のPCにそのまま繋ぐしかない。洋室1でハブで分ければいいが、ハブは買わなければならない。家庭内LAN編1−4に書いたような計画でやるので、ハブは南側の経路のメドがついてから買うことにしたので、今は使えない。
吊り下げた通信機器類
Fig.4-10

吊り下げた通信機器類

配線側から見た通信機器類
Fig.4-11

配線側から見た通信機器類

 これを解決するには、この場所にハブ機能を持つルータを設置してしまうことだ。VoIPアダプタもここに置いてしまえばいい。そうすれば、どこにも新たにケーブルを引かずに接続できる。
 だが、電話台はいろいろとガラクタが詰まっていて、通信機器が3台も置けるような状況にない。仕方がないので、以前洋室1でやっていたような壁掛け式にすることにした。
 ONUは、元々壁掛け用に作られているが、ルータやVoIPアダプタは平置き用だ。なので、これら2つも一緒にしたFig.4-10,11のような吊り下げ板を、あり合わせの材料で作ってしまった。ただ、これだけの物を吊り下げると、相当な重量になる。石膏ボードでは強い固定はできない。落下すれば即通信断になるので、写真の上の方にわずかに見えるように、4点吊りとしている。
 本体はこうやれば収まるのだが、ACアダプタだけはどうしても不格好にならざるを得ない(Fig.4-12)。毎回思うが、何とかならないものか?
どうしてもこうなるACアダプタ
Fig.4-12

どうしてもこうなるACアダプタ

 これでひとまず、家族の通信環境は元に戻った。次編以降の家庭内LAN編3では住戸北半分の工事、家庭内LAN編4では南半分の工事の様子を紹介する。南北(洋室1−浴室天井裏)を結ぶ「バックボーン」は、この時点では引かれていないが、南北それぞれの工事の進展とともに、次編以降でご紹介する。