目次
集合住宅室内まで光ファイバ
 ■ 光導入以前編
 ■ 光通信能書き編
 ■ 光導入準備編1
 ■ 光導入準備編2
 ■ 光導入工事編1
 ■ 光導入工事編2
 ■ 光通信運用編1
 ■ 光通信運用編2
 ■ 光通信運用編3
 ■ Q&A ファイバと通信
 ■ Q&A 集合住宅に光
 ■ Q&A 導入準備と工事
宅内に家庭内LAN敷設工事
 ■ 家庭内LAN編1
 ■ 家庭内LAN編2
 ■ 家庭内LAN編3
 ■ 家庭内LAN編4
 ■ 家庭内LAN概要(別窓)
 ■ Q&A 家庭内LANとは
 ■ Q&A ケーブルと配線
 ■ Q&A 配線工具と材料
 ■ Q&A 隠蔽配線と工法
おまけ&リンク集
 ■ PC自作編
 ■ リンクと資料編

 ■ 集合住宅に光をTop
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光導入準備編1 タイトル
Counter net_junbi1
 2003年夏、私の住む地域でも、Bフレッツが申し込み受付開始と報じられました。
 ISDNから光(Bフレッツニューファミリー)に乗り換えるまでの紆余曲折の始まりです。集合住宅に住んでいて、住戸まで光ファイバを引き込む、ということは一般的ではありません。法律の制約に伴う手続きの複雑さに加え、空き配管に全住戸分の布線を可能にするだけの余裕が確認されていないといけないからです。
 これを、管理組合、管理会社、NTTの協力で、乗り越えた一つの記録です。

「光導入準備編1」の目次

1 Bフレッツが始まった
  □ 1-1 情報収集開始
  □ 1-2 毎月のコスト試算とプロバイダの見直し
  □ 1-3 導入決断!
2 現場調査までのやり取り
  □ 2-1 NTTとの電話打ち合わせ 早くも暗雲
  □ 2-2 管理会社に相談 早期導入は絶望的に
  □ 2-3 NTTに相談 何としても現場調査を
  □ 2-4 8月25日に現場調査のハズが
3 現場調査の詳細
  □ 3-1 10時ちょうどにNTT-MEの方々がやってきた
  □ 3-2 縦系配管の通線確認 これは予備工事?
  □ 3-3 光ファイバの配線システムは?
  □ 3-4 横系配管と室内の通線確認
  □ 3-5 屋外配管の通線確認
  □ 3-6 空き配管状況のまとめ
  □ 3-7 予備配管は全戸光化を可能にするか

Bフレッツが始まった
□ 1-1 2003年7月中旬…情報収集開始

 新聞(地方面)に、この近辺でBフレッツサービス開始の記事が出ていた。やっと、という感じだ。サービスが開始されたのはいいが、集合住宅で住戸までファイバを引き込むにはいろいろと分からないことが多い。
 契約を前提に情報を集めることにする。早速Webを廻って情報を調べてみたが、よく分からないのが、管理組合や管理規約との関係だ。
 NTTのセールストークとしては、集合住宅では「マンションタイプがお勧め」となっているが、ニューファミリーでも申し込めるとも書いてある。ただ、どちらも制限があるとのことだ。問題はその「制約」だ。
 マンションタイプについては管理組合経由での申込なので、その承認が必要なのは分かるが、ニューファミリーについて、管理組合の承認が必要なのか、また管理組合が工事費を一部負担するのかどうか、よく分からない。たかだか1本のファイバを空き配管に通すだけである。
 そこで、NTTのHPから質問を出した。要旨は次の点。
□ 質問その1…マンションでニューファミリー?
  • マンション(区分所有)に住んでいる個人が、ニューファミリータイプを契約する場合、工事に対する管理組合の承認と費用の出費が必要?
翌日すぐに、NTTから回答が来た。要旨は以下の3点。
  • マンションでのニューファミリーの工事内容
    Bフレッツ(マンションタイプを除く)の場合、既存の電話回線とは別に光ケーブルを敷設する。詳しく言うと、マンション内の共有設備である、電話用端子盤(MDF)に光用の接続箱を取り付け、MDFからは既存の配管を通して各部屋に光ケーブルを引き込む、という工事
  • 配管工事の必要性
    マンションの場合、電話の為の配管等は出来ているので、配管工事は通常必要ない
  • 集合住宅の場合特有の条件
    集合住宅の共有部分(電話用配管・端子盤)を使用するので、分譲の場合は、既存の設備が利用できても、管理組合の承認は必要
 共有設備である既存配管や端子盤を使用する時は、ただ配管の中にケーブルを通すだけでも、マンションの管理規約上、「共有部分の使用」に該当するので、管理組合の承認が必要とのことである。
 借りている家ならいざ知らず、マンションでは電話線1本増設するのに、管理組合総会の議決が必要ということなのか? 法律を何とかして欲しい気にもなる。

□ 質問その2…物理的にケーブルが引けるか?
 私の住戸は上層階の端にある。MDFは1階にあり、マンションを直方体に例えると、ほぼ対角線の位置にある。ケーブルの経路は教わったが、本当にマンションのMDFからうちまでの長い距離を、決まった工事費で引けるのか疑問だったので、その点を前回と同じNTTの人に質問した。またすぐに回答が来て、要旨は次の点。
  • 工事はたぶん決まった工事費の範囲内で可能
  • 但し、縦系配線(MDFから各階まで垂直に延びている配線)の毎月の使用料はもらう
とのこと。一戸建てと違っていろいろ手間と費用が掛かる。ここまで来ると、だんだん現実味を帯びてきた。
 余談だが、NTTの対応はかなり早い。メールを書いて翌日には必ず回答が来る。ISDNの頃に、「グローバル着信の有無により、TA側でポートの割り振りをしたい」と質問メールを投げたのに、なかなか返事が来なかった頃からすれば、雲泥の差だ。
□ 1-2 2003年7月中旬…毎月のコスト試算とプロバイダの見直し

 やはりまだまだ「光ファイバ=費用が高い」というイメージがある。仕組みを知らない妻などは、導入してから「騙された」と思いかねないので、Bフレッツ導入後のコスト調査/試算を始めた。
 だいぶ前から、各プロバイダや回線事業者で「工事費タダ」「月額費用割引」のキャンペーンをやっているのは知っていたが、今まで他人事だったので、細かいことは何も分からない状態だ。調べると、これらはプロバイダはどこでもやっていて、ほとんどの大手はNTTの工事費が無料で、プロバイダの月額費用も最初の数ヶ月が無料またはわずかな額になる内容だった。
 この際、加入するプロバイダも見直すことにした。これまで入っていたプロバイダは、性能面では特に不満はないのだが、メールアドレスの追加など付加サービスが少し高い。HP容量も少なめだ。光を導入するついでに、他に乗り換えることに決めた。乗り換え先は、付加サービスが安く、老舗で実績のあるASAHIネットに内定。
[宣伝 モデムでダイヤルアップがまだまだ全盛だった時代、高速性で定評があった。新技術への対応も早い。基本料がBフレッツで\1,400で安価な部類。HP容量が100MBももらえた上に、IP電話基本料に固定IPオプションも無料。]
 月々のコストの検討もした。そもそも、導入の目的は、ネットアクセスの高速化よりも光ファイバという将来性のあるインフラに投資することにある。しかし、当面、メリットとして表に見えるのは「ネットが速くなった」という程度でしかないので、あまりコスト高になる「ベーシック」は対象外だ。試算してみると、フレッツISDNよりは高くなるが、\2,000程度の上昇に収まるのではないか、と予想された。
 ISDNをアナログ電話に戻し、プロバイダも乗り換え、さらにIP電話導入を想定した試算表を作ってみた。
 (価格はいずれも税別で試算当時のもの)


移行前料金Bフレッツ
基本料金1\1,200
アナログとの差
\4,500
ニューファミリー
付加料金1\2,800
フレッツISDN
\200+\800
屋内配線料
付加料金2\300
iナンバー1番号
\900
ONU使用料
付加料金3\200
INSエリアプラス
\380
IP電話アダプタ
プロバイダ
基本料金
\2,000\1,400
ASAHIネット
プロバイダ
付加料金1
\300
アドレス1個追加
\100
アドレス1個追加
プロバイダ
付加料金2
------\280 (*1)
IP電話基本料
合計\6,800\8,560
(*1) IP電話基本料は現時点では無料になっている

 ISDNをアナログに戻して、2つの電話番号のうち1つをIP電話に乗り換えれば、\1,800程度しか負担が増えないことがわかった。ネットの速度が数千倍になった上に料金がこれなら、家計的にも納得が得られて導入が可能だ。逆に言えば、光が導入されている地域では、ISDNの割高感が際立つ結果となった。
 しかし、見てみると、屋内配線料とONUの使用料が結構高い。電話線では屋内配線料を取られないことを考えると、釈然としないものがある。ONUの使用料も、いずれサービスが多様化したら、かつてのDSUがそうであったように、レンタル・売り切りが選べるようになると考えるが、どうなるだろうか?
□ 1-3 2003年7月下旬…導入決断!

 コストの面が問題ないので、Bフレッツの導入を正式に決断した。ASAHIネットに請求しておいた入会案内と手続き用紙が送られてきた。Web上で請求したのが2日前だから、これも対応が早い。早速、用紙に記入して返送した。これで、工事費無料で光ファイバが導入できる。
 同時に、マシンの性能アップのために、必要な部品も買わなくてはならない。元々のマシンがPentium166なので、いずれはマシンの買い替えになるが、当面は元手がないので、手持ちマシンのアップグレードでしのぐことにする。
 申込用紙の投函から3日ほどしたら、ASAHIネットからメールが来た。もう申し込みの登録が済んだようである。29日がNTTへの連絡となっていて、そのうちNTTから「コンサルティング日」の連絡が来るらしい。希望日は8月7日だ。確か、申し込み用紙に「申込日から7日以上後の日付にしろ」と書いてあったので、こうなっている。希望通りになるかどうかは、NTT次第だ。
 翌日、NTTから電話があった。NTTの担当者はIさんという女性である。最初の「コンサルティング」=電話打ち合わせを8月7日に決めた。

現場調査までのやり取り
□ 2-1 2003年8月上旬…NTTとの電話打ち合わせ 早くも暗雲

 8月に入って、会社が夏休みになった。そろそろブロードバンドルーターを選ぼうと、近くの電気屋やパソコンショップを巡って帰ってくると、NTTから留守電が入っていて、「7日のコンサルティングを5日にして欲しい」ということらしい。早速電話するが、Iさんは電話中で、後から電話がかかってきた。早い方がいいから5日にしてもらった。
 一方ASAHIネットからは、入会後の案内やID、仮パスワードを書いた紙が届いた。相変わらずレスポンスが早い。
 さて、いよいよコンサルティングの日がやってきた。Iさんから電話がかかってきて、「コンサルティング」の始まりだ。ルーターを使いますか、PCは何台ですか、(集合住宅の場合)管理組合の承認は取れますか…、などの質問に答えるだけだ。それに答え終わって、向こうが「引ける可能性あり(=条件が揃っている)」と判断すると、今度は工事のための現場調査の日程を決める話に入ってゆく。現場調査の結果、NGであることもあり得るので、ここで喜ぶのはまだ早い。

 話はやはりスムーズに行かなかった。それは、「管理組合の承認を現地調査あるいは工事までに取って下さい」との一点だった。そんなに早く管理組合の承認を取れるわけがない。正式な総会を開くとすると、(うちのマンションは)11月下旬である。例外的に理事の多数決だけで済むという話もあるが、それは理事さんの中に、ブロードバンド導入に積極的and/or詳しい人がいて、あらかじめそういう例外を、管理規約に盛り込んでいるからだ。そうでないうちのような場合は、管理会社を通じて、正式に提案してからでないといけない。
 「それなら、きちんと相談して承認を取って下さい!」というような言われ方をしたので、相談してから連絡します、と言っておいた。「申込をするんだから、当然、承認は取れているもの」という思い込みが向こうにあったのだろうか? やはり、管理組合の承認も含めて、物理的な障害以外は引けることが確実になってから申し込まないといけないのだろうか?
 管理組合を対象とした「交渉代行」をNTTでやっていることはキャンペーンの案内などで知っていたが、人に任せるのが嫌な性格が災いして、断ってしまった。このことが、後でかなり面倒なことになるのを、この時点で知りようもない。
 現場調査は、何とか夏休み中にやって欲しいと思っていたが、最短では、19日にしか空いていないというので、その次の週にしてもらった。それが、なんと25日の午後だという。この日は平日で、休みを取るしかない。この時点では、まだ管理組合の承認もないし、管理会社に連絡もしていない。調べないことには何も分からないのだから、調べてもらってから結論を出すのだと思っていた。
□ 2-2 2003年8月上旬…管理会社に相談 早期導入は絶望的に

 この手のマンションの設備について「許可」を取る話は、まずは管理会社が窓口だ。管理会社では、マンションごとに担当が決まっていて、うちの担当はとKさんいう人が担当だ。担当者から、管理組合の理事長に話が行って理事会が開かれ、区分所有者全員が出席する「総会」に議題として諮られる仕組みだ。
 Kさんに電話して事情を話すと、最初はマンションタイプと勘違いされてしまった。単に「光ファイバを引きたい」では通じないようだ。「部屋まで」と言わないと、マンションタイプだと思われてしまうらしい。ただ、Kさんは今までにマンションタイプの導入経験が豊富で、NTTの集合住宅担当者ともコネクションがある、とのことで、心強い気がした。
 次は、管理組合の許可が必要か否かの話だが、空き配管を使うだけで、配管を新設しない場合でもやはり「総会の議決を経て下さい」ということである。Kさんは、「あなたが配線したあと、他の人が線を引きたいといった場合に、配管に空きがないと『早い者勝ち』状態になって、不公平になります。」という。区分所有法なる法律が盾になっているわけだが、大概は「管理組合の議決を取る必要性の低い微細な事項は、規約でこれを定めることができる」という但し書きが付いているはずだ。
 そんなことを言いながら、押し問答していると、「組合の議決を経ていないと、訴訟になったときに勝てない」と言われてしまった。管理会社にしてみれば、法に反する疑いのあることはできないのだろう。
 逆に空き配管が人数分確保できれば、何も問題がなく、管理組合が否決する理由はないでしょう、という趣旨のことをKさんは言っていた。ということであれば、何としても全員光ファイバが引けるように既存の配管を利用するしかない。そのために、現場調査は絶対に必要である。Kさんは、管理組合への説明資料なのかマンション全体への導入のためなのか、NTTに資料をもらう、と言っていた。

 いろいろなサイトに出ている、「集合住宅への導入記」をよくよく読んでみると、やはり、制度上、管理組合の承認が、何をするにもネックなようだ。法務省の「既存共同住宅のインターネット接続環境の整備に係る合意形成マニュアル」も読んでみたが、結局は現行法制上は、管理規約できちんと決めていない限り、総会での1/2以上の議決が必要なようだ。配管など技術的には問題なくても、制度上、門の前までファイバが来てサービスが始まっていても、住民の過半数が賛成しない限りは、いつまでたっても光ファイバは引けないままなのである。(ちなみに、集合住宅でも賃貸の場合は、所有者=大家さんが許可してしまえば全戸に導入可能だ。その意味で、区分所有の方がこの手の手続きは困難だ。)
 たまたま、Bフレッツのサービス開始が管理組合総会の直後だった場合は、約1年待ちなさい、という法律が正しく、法律が現状に合っていないわけだ。マンションによっては、これもたまたま、理事自身がブロードバンドを導入したくて奔走してくれ、管理規約を改正して、いちいち総会の議決を経ずに、理事会承認で決められるように運用しているところもあるようだ。
 結局、法律が盾となっていることが明らかになり、管理組合総会の議決まで、何とか全員分の配線路を確保すべく、技術的な検討をしながら待つことにした。
□ 2-3 2003年8月中旬…NTTに相談 何としても現場調査を

 一方、NTTにもこの話をしなくてはならない。電話して説明すると、「管理組合の承認が取れないと、現場調査ができない」と言われてしまった。話が逆のような気がする。管理組合に説明するためのデータを得る目的で、現場調査をするのであって、空き配管があるかどうかなどがわからない状態では、他人に説明できない。独力で管理組合に交渉するつもりだから、そのネタ元を絶たれては困るのである。NTTも元々そういう目的の調査ではないし、調査するには人件費がかかるから、許可が出ることが確実になってからでないと動けないことが前提になっているようだ。
 「説明するのに現場がどうなっているのかわからなければ、管理組合の承認を得ようにも材料がない!」と言ったら、Iさんは、しぶしぶOKしてくれた。調査日程に変更はなく、8月25日午後である。
 今回は、このように半ば「ゴリ押し」的に、調査をお願いしたが、本当はもっとエレガントなやり方があったのだ。この後書くように、管理会社のKさん経由で、NTTの集合住宅担当にお願いして、ことを進める方法である。この頃は、そんな方法があるとも知らずに、ただただ押していた。ちょっとまずかったと思う。
 これを読んでいる皆さんが、自分の部屋に光ファイバを引きたいと思う時は、まず管理会社に相談してNTTの担当者が付いていないか確認し、ダメならNTTに直接交渉を依頼することをお勧めする。
□ 2-4 2003年8月下旬…8月25日に現場調査のハズが

 25日の調査に当たって、MDFの鍵を預かっておかなければならないので、許可をもらおうとKさんに電話をしたが、2日間代休とのことで連絡がつかなかった。翌々日、再び電話してみると…困ったことになった。Kさんの話では、絶対にMDFの鍵は貸し出せないので、現場調査は管理人さんの居る時間にしてくれ、ということだった。うちの管理人さんは午前中だけで帰ってしまうので、午後の調査は不可能になった。
 MDFの鍵くらい…と思うが、盗聴の危険の生じるようなことをさせてはまずい、ということだろう。何かあった場合、責任が問われる話でもある。
 仕方がないので、再びIさんに電話して謝って、午前中が空いている最短の日程、という条件で探してもらった。今回は割と近い日程が取れて、9月1日となった。調査日は決まったが、全員分の空き配管が確保できなければいけない上に、管理組合の承認を経ないといけない(=12月まで待たなければならない)状態となってしまい、精神衛生上非常によくない。
 翌日、管理人さんに確認したが、9月1日は通常勤務だそうだ。時々休暇を取るので、確認は必須である。今度こそ抜かりはない。

現場調査の詳細
□ 3-1 2003年9月1日…10時ちょうどにNTT-MEの方々がやってきた

 9時45分頃に、NTT-MEより電話があって、担当の方々が10時ちょうど頃にやってきた。ベテランの感じなおじさんと若い人それぞれ一人だ。
 管理会社のKさんへの調査結果の報告と、管理組合への説明資料の作成のため、写真を撮ることにして、調査に張り付かせてもらう。写真を撮ることは趣旨を説明した上で、管理組合からは全戸分ファイバが引けないと不公平になる、と言われていて、そのための説明資料にすることを伝えた。
 まだ工事ではないはずなのに、新品のナイロン紐や通線ワイヤ(黄色と黒=「タイガース柄」のワイヤ)を持ってきている。工事でもないのに、何故?と気になる。
 まずは、管理人さんにも入ってもらって、MDF(主配線盤)を開けてもらった。うちのマンションは1棟のみで70戸足らずと、比較的小規模なので1階にあるMDFはラックではなく壁面取り付けになっている。
 MDF内は、避雷器と端子台で埋め尽くされていて、ほとんどスペースはない。これで工事ができるんだろうか、とちょっと心配になる。
1階にあるMDF
Fig.3-1

1階にあるMDF

 余談ながら、この通線ワイヤは、「これが通れば光ファイバの曲げ規格を満足する」というスグレモノ?らしい。つまり、これが通れば(物理的には)何の問題もなく光ファイバが引ける、ということなのだ。これが通ることを祈らずにはいられない。
 MDFとは別に、2階以上の各階には、IDFと呼ばれる端子盤が設置されている。これは、各階を結ぶ配線(これを縦系配線という)と、その階の各住戸を結ぶ配線を接続するためのものである。IDF相互、あるいはMDFとIDFを結ぶ配管は、「縦系配管」と呼ばれ、IDFと各住戸を結ぶ配管は「横系配管」という。設置される形態をイメージすれば、分かりやすいネーミングである。
 縦系配管からは「ガイド線」が出ているのが見つかった。これは、このマンションを建てたとき、予備の空き配管を設置しておいて、そこに新しくケーブルを敷設するときには、この「ガイド線」にケーブルを結びつけて上階から引っ張れば、すぐに引けてしまう、というものだ。おじさんに改めて、全戸に光ファイバが引けるだけの空きがあるかか聞いてみると、十分すぎる余裕だという。
2階のIDF
Fig.3-2

2階のIDF

2階のIDFからMDFへのガイド線
Fig.3-3

2階のIDFからMDFへのガイド線

上階へのガイド線
Fig.3-4

上階へのガイド線

□ 3-2 縦系配管の通線確認 これは予備工事?

 彼らは、このガイド線に自分たちの持ってきたナイロン紐を結びつけ、2階から引っ張り始めた。何をするつもりなのか聞いてみると、今度本番でファイバケーブルを引くときには、この紐にケーブルを結びつけて一気に引き込む階まで引っ張ってしまう、というのだ。
 それではガイド線がなくなってしまう、と言うと、ガイド線はなくても通線ワイヤがあれば、工事には全く問題ないという。だが、既成事実を作ってしまうことになりはしないか?
 もちろんNTTにしてみれば、十分余裕があって技術的には『これで工事ができない』という結論には到底ならないから、工事の準備をしたまでで、「これで引けないなどというのはおかしい」ということなのだろう。その通りなのだが、法律的にはまだ許可が下りたわけではないので、これを工事だと言われると、まずい気もする。しかし、止めてしまえば調査が終らないので、万一否決された場合は紐を引き抜けばよいことを確認して、続行してもらう。
 おじさんたちは、あれよあれよという間に、下の階からガイド線を使ってナイロン紐をうちの階のIDFまで上げてしまった。心配する私を横目に、やたらと「楽勝」ムードで作業していて、何度も「十分余裕」「十分余裕」と言っていた。
 太い空き配管が複数あって、ほとんど空いているのだそうだ。詳しいことは最後に話を聞くことにして、作業を続けてもらう。
 IDFは配管の取り出し位置や、機器の並べ方などが各階で微妙に違っていた。どこかで組んで持ってきたのでなく、現物合わせしたのだろう。各戸への配管は電話とTVが別配管になっている。
ナイロン紐を上階へ通して行くところ
Fig.3-5

ナイロン紐を上階へ通して行く

 他の階の電話の横系配管と2階のそれを比べると、2階の横系は全部同じ位置から壁に埋まっているのに対して、うちの階のはIDFの下の床から、分配されている。ただ、うちの住戸だけがIDFの背面から壁の中に入っていた。見た範囲では2階だけが特別のようである。
 MDFもIDFもAC100Vは来ており、ケーブルテレビ(近くの高層マンション建設の際に、電波障害が生じたため、地上波TVもケーブルで配信されている。)の双方向アンプの電源はここから取っていた。電源があるということは、VDSL装置も取り付け可能だということだ。

IDFと横系配管の接続口 (2F)
Fig.3-6

IDFと横系配管の接続口 (2F)


IDFと横系配管の接続口(ウチの階)
Fig.3-7

IDFと横系配管の接続口(ウチの階)


縦系配管とIDFの接続口 (2F)
Fig.3-8

縦系配管とIDFの接続口 (2F)

我が家への横系配管に通線ワイヤを通す
Fig.3-9

我が家への横系配管に通線ワイヤを通す

□ 3-3 光ファイバの配線システムは?

 ところで、ベテランの担当者に光ファイバシステムのことも聞いてみた。
(ここの内容は調査担当者の勘違いと私の聞き間違いを含み、不正確なので、その部分を赤字で表示)
  • 引き込み部分のケーブルは8芯で1芯あたり16本に分岐可能
  • 分岐はMDF内に設けたPDSSという分岐箱で行う
  • 分岐後の速度は100Mbps/16ではなく、これより十分速い

担当者は、どうやらマンションタイプと勘違いしていたようである。私も、ニューファミリーはMDFやIDFでの分岐はないはずなので、「光のまま分岐するんですか」と念を押したのだが、「そうだ」と自信を持って答えられたので、この時点では信じてしまっていた。文中に出てくる「PDSS」は「接続箱」であって、「分岐箱」ではないことは、かなり後になってNTTの集合住宅担当者(後出)に教えてもらった。この後、この間違い・思い込みが「全戸に光ファイバが引ける」という大前提を崩してゆき、再検討を要することになる。

 ここで、1本のケーブル(8芯)でBフレッツ128回線も取れる、というのは誤りである。Bフレッツのニューファミリーでは、ユーザーの建物内での分岐は原則として、していない。これが本当なら、一度ケーブルを引き込んでしまえば、各戸にファイバが「すぐ引ける状態」になったと言えるがそうは問屋が卸さなかった。そのあたりの話は光導入準備編2で書こうと思う。
 マンションタイプなら、「分岐」ではないが、VDSL装置で16ユーザーまで収容可能なので、5芯分あればマンション全戸にサービス可能である。
□ 3-4 横系配管と室内の通線確認

 次はうちの階のIDFから部屋までの配管だ。ここには既設の電話線が通っており、空き配管はない。もちろん縦系のようなガイド線もないので、彼らが持ってきた通線ワイヤの出番だ。IDFから部屋までは曲がりが何ヶ所かあって、つかえた所もあったが、10分足らずで程なく引けた。
 いよいよ室内にワイヤが入って来る。ISDNのところにも書いたように、我が家の電話線は、まず台所のモジュラーのところに一旦落として、さらに別の洋室モジュラーにカスケードに延びている。当然、配管もそのように延びている。PCはこの洋室に置いているので、ONUもこの部屋に置いて欲しい。そう希望を伝えたところ、すぐに通線ワイヤを通してくれて、洋室のモジュラーまでも簡単に引けた。配管が細くて断念したケースもWebに出ていたから、IDFからここまで30分かかっていないこと自体、かなりラッキーなケースだろう。
台所のモジュラー&コンセント
Fig.3-10

台所のモジュラー&コンセント

洋室のモジュラー&コンセント
Fig.3-11

洋室のモジュラー&コンセント

□ 3-5 屋外配管の通線確認

 これで、MDFからは物理的には何の問題もなくファイバを部屋まで引けることがわかった。そして最後に残るのが、引込み口(マンションの前の電柱)からMDFまでの経路である。
 彼らが部屋を出た後、部屋のモジュラーの蓋がゆがんでいたりして、直していたら、彼らはさっさと外に出て、その経路をチェックし始めていた。行くとすでにマンション北側のハンドホールが開いていて、通線ワイヤを通しながら経路確認していた。ここは土の下だ。ハンドホールの中は水が溜まっている。
マンション北側にあるハンドホール
Fig.3-12

マンション北側にあるハンドホール

電柱側から通線ワイヤが通ったところ
Fig.3-13

電柱側から通線ワイヤが通ったところ

引き込み電柱
Fig.3-14

引き込み電柱

引き込み電柱の内部を開けて通線
Fig.3-15

引き込み電柱の内部を開けて通線

 引き込み口からハンドホールまでの空き配管は、28mm径のと50mm径のが1本ずつあった。これとは別に、28mmがCATV用に、50mmが電話用にすでに使用されていた。電話の方はケーブルが太い(40mmφくらいある)のでいっぱいだが、28mmのCATV用は5Cくらいの同軸が1本だけだから、まだ余裕がある。また、ハンドホールからMDFまではわずかな距離(3mほど)も、同じ構成だった。建物外の引込部分にも十分な余裕があることが分かった。
□ 3-6 空き配管状況のまとめ

 最後にお願いして、空き配管の構成をおさらいしてもらった。マンションの入り口のロビーで、構成を紙に書いてもらった。それによると、引き込み電柱からMDFまでの配管状況は、
  • 全部で50mmφと28mmφが各2本の計4本
  • 上記のうち空きは50mmφと28mmφが各1本
  • 空いていない50mmφは電話線で余裕なし
  • 空いていない28mmφはCATV同軸1本のみで余裕あり
であった。縦系の配管は、
  • 10階まで
     28mmφ×3本(うち空き2本)
     22mmφ×3本(うち空き2本)
  • 10階以上
     28mmφ×2本(うち空き1本)
     22mmφ×3本(うち空き2本)
であった(詳細は下図参照)。
引込からMDFへの空き配管
Fig.3-16

引込→MDFの空き配管

IDF周りの空き配管
Fig.3-17

IDF周りの空き配管

□ 3-7 予備配管は全戸光化を可能にするか

 得られた空き配管状況から、将来、全戸光化が物理的に可能かどうかを検討しなくてはならない。要するに、空き配管が全戸分の余裕を持っているかどうかだ。1階のMDFにPDSSを配置するとなると、配線が最大量なのはMDFから2階のIDFまでで、全戸数分の70本近いファイバが延びることになる。(おじさんは、「十分、十分通る!」と言い切るのだが、上にも書いたように、これはマンションタイプの「銅線」のことだろう。)各戸までのファイバケーブルは、ファイバ単体ではなく2本のテンションメンバ(張力を負担する鋼線)が一本となったもののはずで、径はそれなりに太い。空き配管だけではとても70本も通らない。CATV用の余裕のある配管も使えば、なんとかできるだろう。
 この時点では、その程度の認識でいた。また、それ以上深くは突っ込んで聞けなかった。いろいろ彼らに質問しながら進めたので、12時までの時間が結構押してきたからだ。紙を書き終わって礼を言ったのが、12時10分頃だっただろうか。
 管理組合の説明に必要な材料も一応整ったし、何より何とか工夫すれば全戸分引けるだけの空き配管がありそうだ、ということがわかった。この調査の後、明かりが見えたようでホッとした。